植物研究助成 32-02
伊豆・三浦・房総に着目した高感度景観遺伝解析による海浜植物の海流分散機構の解明
代表研究者 | お茶の水女子大学 基幹研究院・自然科学系 講師 岩崎 貴也 |
【 背景 】 |
海浜は、移動しやすく貧栄養な土壌、高い地温、塩水の暴露などの特殊な条件が揃っており、これらに適応できた海浜植物のみが生育している。各集団は孤立した島のような状態であり、海流・潮流(以下、海流)による種子分散が集団間の交流や集団形成に大きな役割を果たしていると思われる。しかし、複雑な地形・海流の地域内で、海流が集団間での種子分散にどのような影響を与えているのか、どのような集団が遺伝子のソースあるいはシンクになっているのかなど、狭い地域内での海流分散機構の詳細は明らかになっていない。 |
【 目的 】 |
長期間の海流散布が可能な代表的海浜植物2種に着目し、関東沿岸の海浜環境をモデル系として、新規に開発する高感度遺伝マーカーによる遺伝子流動の推定を行う。さらに、景観遺伝学的解析を行うことで、どのような要因が海流分散による遺伝子流動に影響を与えるのかを明らかにする。 |
【 方法 】 |
海浜植物2種(ハマヒルガオ、ハマエンドウを予定)について、伊豆・三浦・房総の3半島を中心に合計36ヶ所からサンプルを採集する。MiCAPs法を用いて数千座の核マイクロサテライト領域周辺の塩基配列を取得し、そこから50以上の遺伝マーカーを設計する。次世代シーケンサーを用いて開発したマーカーの解析をすることで、効率良く大量の遺伝子型の決定を行う。その結果を元に、長期的、あるいは短期的な遺伝子流動を方向性も含めて推定し、各集団の地形的特徴や海流分散シミュレーションによる集団間の分散確率(接続性)との間の関係性を景観遺伝学的解析で明らかにする。 |
【 期待される成果 】 |
近年、海浜環境は都市開発で全国的に減少しつつあり、海流や地形的特徴が遺伝子流動に与える影響を解明することで、海流で種子分散を行う様々な海浜植物の保全に役立つ知見を提供できる。また、他の海浜植物はもちろん、様々な地域・生物について広く適用可能な新しい高感度景観遺伝解析アプローチを確立できる。 |