植物研究助成

植物研究助成 32-06

伊豆地方におけるスダジイタマバエの分布の変遷および生態系への影響評価

代表研究者 佐賀大学 農学部
准教授 徳田 誠

背景

 生物の大発生は、生物群集に多大な影響を及ぼす。伊豆諸島南部では近年、スダジイの花芽に虫こぶを形成するスダジイタマバエの大発生が続いている。スダジイは伊豆諸島で自生する唯一のシイ・カシ類であるため、本種のドングリ生産が激減すると天然更新が妨げられるだけでなく、ドングリを利用する生物群集に甚大な影響が及ぶ可能性がある。
 伊豆地方ではスダジイタマバエの生息域が徐々に北上しており、新島では2013年、伊豆大島では2016年にそれぞれ初めて確認された。今後、タマバエの分布域や生息密度がさらに北上し、本州でも急速に拡大してスダジイの種子生産に甚大な影響が及ぶ恐れがあるため、現状を正確に把握することが喫緊の課題となっている。

目的

 本研究では、(1)伊豆諸島北部と伊豆半島を中心とした本州におけるスダジイタマバエの分布と密度の変遷、(2)本州において在来の天敵寄生蜂がスダジイタマバエの密度抑制に果たす役割、(3)タマバエが伊豆地方のスダジイの種子生産と生態系に及ぼす影響を詳細に調査し、解明することを目的とする。

方法

 伊豆地方でスダジイの花芽を調査し、タマバエの分布と密度、スダジイの種子生産を調査する。本州においてスダジイタマバエの虫こぶを幼虫脱出前に採集し、天敵の寄生蜂による寄生率を調査する。一連の結果を踏まえ、タマバエが伊豆地方のスダジイと生態系に及ぼす影響を解析する。

期待される成果

 今回調査対象とするスダジイタマバエは、伊豆諸島南部で種子食性の鳥類や昆虫類に甚大な影響を及ぼしている懸念がある。今後、本州での急速な分布拡大とスダジイや関連する生物への多大な影響が危惧される。
 本助成により、本州における侵入初期の密度と分布域の広がりや在来寄生蜂による寄生の有無を正確に調査することにより、今後の被害予測や緑地と希少生物保護のための方策について提言することが可能となる。