植物研究助成

植物研究助成 32-07

リアルタイム3次元測定法を用いた植物3次元構造が風によるサンフレックに与える影響評価

代表研究者 東京大学 大学院農学生命科学研究科
准教授 細井 文樹

背景

 植物は樹冠の空隙であるGapを通じて太陽光を樹冠内部まで到達させ、光を受けることで効率よく光合成を行う。Gapは風による動きでその位置が変化し、被陰部に到達する直達光が瞬時瞬時に変化する(サンフレックと呼ばれる)。そうした短時間の変動光に対して植物は光合成能力を変化させ、光合成を効率よく行う。こうした風によるサンフレックは植物の光合成において重要であり、その理解を深めるためには、植物構造が風によるサンフレックにどのように影響を与えるのか検証する必要がある。しかしこうした検証には植物構造の動的な3次元測定技術が必要となるが、その困難さゆえ、そうした技術はまだ確立されていない。

目的

 本研究の目的は、風による樹冠構造の時間変動を3次元的にとらえる技術を開発し、これを用いて植物構造が風によるサンフレックにどのように影響するのか明らかにすることである。

方法

 対象は測定環境を調整しやすい草本の作物(イネ科など)で行う。測定方法は、3次元測定器を対象上部に設置し、風向風速計測を行いながら、風による樹冠3次元構造の時間変動データを取得する。得られた3次元時間変動データから、穂や葉などの各器官の位置を追跡し、対象樹冠の中で測定された風によるサンフレックの光強度変動データとあわせて、各器官の風による移動とサンフレックの光強度変動の関係を得る。さらに計算機シミュレーションも併用し、葉や穂などの各器官の構造がどのような過程でサンフレックに影響を及ぼすのかを明らかにする。

期待される成果

 本研究では植物構造がどのようにサンフレックに影響を及ぼすかが明確となり、植物各種がその構造によってどのように風によるサンフレックを利用しているか、その戦略に関する理解が深まり、植物生理生態機能のより一層の理解に貢献する。さらに環境保護の観点から、サンフレックを含めた新しい植生管理の在り方に関する知見が得られ、食料生産においてはサンフレックの有効獲得からの光合成能力アップと収量増大を可能とする形質を有する品種選抜などに応用可能となる。