植物研究助成

植物研究助成 32-09

超小型分光センサを活用した植生の多点同時モニタリング技術の開発

代表研究者 東北大学 大学院工学研究科 電子工学専攻
准教授 宮本 浩一郎

背景

 温暖化の影響は極端な気象の連発として顕在化している。極端な環境変化は植物にとって大きなストレスとなり、農業では作物収量低下、生態系においては森林減少の要因になり得る。現在、広域植生の環境ストレス検出にはドローンや観測タワーを用いたリモートセンシングが行われているが、表面的な情報しか得られないこと・コスト・測定頻度や簡便性などさまざまな課題が顕在化してきた。そこで、申請者は葉に直接取り付けて単体動作する超小型の分光観察ユニットと測定結果を自動で収集し解析するシステムを開発した。現在までに市村清新技術財団 植物研究園に最大4機のシステムを設置してフィールドテストを行い、長期連続測定と遠隔モニタリングに取り組んでいる。

目的

 植物の健康状態をリアルタイムにモニタすることは、農業・林業における経済損失の抑制や、生態系保持の観点から非常に重要である。本研究では申請者が開発した超小型センサを葉に取り付け、植物の生理挙動を測定する。さらにクラウド技術を用いてデータを取得することで、植物の環境応答モニタし、遠隔からリアルタイムに、且つ長期間観察する技術の構築を目指す。

方法

 センサユニットを植物研究園の植物に取り付ける。春から秋にかけて葉の分光観察を多点同時かつ連続的に測定を行うことで、植物の環境応答センシング技術の構築を行う。昨年度に引き続きセンサユニットの性能向上を推進するが、本年度は人工気象機を用いた室内実験を並行できる環境を構築し、さらに光合成と植物分光測定の専門家も参加し、分光学的なパラメータの評価や導出を分担することで測定精度の向上や解析モデルの検討を強力に推進する。

期待される成果

 超小型センサは植物の健康状態をダイレクトに検出、多点同時測定を可能にする。さらに、従来の評価法やリモートセンシングと補完し合うことで植物モニタリングを高精度で行うことができる。例えば、大規模農業におけるフィールド管理に応用することで農業コストを抑えることが可能になる。また、森林に広く展開することで地球温暖化加速に起因した生態系保全活動や脱炭素化の取り組みに貢献できる技術になり得る。