植物研究助成

植物研究助成 32-11

植物栄養成分の電気化学センサーに対する夾雑物質の影響抑制技術の開発

代表研究者 京都大学 大学院農学研究科 応用生命科学専攻
教授 白井 理

背景

 植物の成長時期に応じて必須栄養成分の濃度を制御できれば、農作物の成長促進や高品質化が期待される。専門的な知識や前処理等の操作を必要とせず、持ち運びが簡単で、且つ安価で容易に栄養成分濃度が測定できるイオンセンサー(ISE)は魅力的である。しかし、植物を培養するとその分泌物(有機酸、アミノ酸やアミン等)がセンサー感応膜に影響を与えることが判ってきた。
 本研究では、植物の疎水性分泌物によるセンサーの感応特性の劣化の抑制を目指して、感応膜の改良を試みる。また、土壌中での直接計測も検討する。

目的

 水耕あるいは土壌で植物を栽培する際は、ISEによる各イオン濃度の測定が最も簡便でその場でできる。但し、ISE用電極は、共存物質の影響を受け、特にモニタリングのように常に環境水と接する場合は大きな影響を受ける。植物が分泌する有機酸、アミノ酸、アミン等は非常に疎水的なものがあり、極微量でも測定に影響するものもある。そこで、植物から分泌される比較的大きな疎水性イオンが感応膜に直接触れにくい隔膜の導入を検討している。細孔の孔径を最適化し、疎水性イオンの影響が少なく、応答時間が早い測定系の構築を試みる。

方法

 液膜型イオンセンサーの感応膜表面に適度な孔径の細孔を有する隔膜を設置し、疎水性イオンによるイオン交換の影響を抑制する測定系を考案・構築する。また、液絡及び参照電極の内部液からの電解質流出を抑制し、感応膜に対するその影響を小さくする。さらに、土壌中にセンサー電極を直接挿入し、測定が可能となるように、圧力や負に帯電した土壌粒子の影響を受けない系を考案する。

期待される成果

 疎水性の有機酸、アミノ酸、アミン等は微量でも存在するとイオン交換し、感応膜の特性を悪化させる。長期間使用できるセンサーは非常に扱い易く、農業管理において有用である。液絡については、液間電位を発生させないためにKClが用いられてきたが、K+-ISEと同時にNH4+-ISEも影響を受ける。また、NO3--ISEは高濃度のCl-が共存すると妨害の影響が現れるので、妨害の影響が現れない MgSO4を用いることで対応する。同法は、生体や環境のその場分析や食品・医薬品の品質管理にも適用できる。さらに、土壌粒子による影響を低減化できれば、土壌中の栄養成分をその場での直接定量でき、有力な手法となる。