植物研究助成

植物研究助成 32-13

蛍光・熱放散・葉面熱収支法による植物の葉の光合成測定原理の開発

代表研究者 山梨大学 大学院総合研究部
助教 黄瀬 佳之

背景

 光合成測定には葉を箱で覆って内部のCO2濃度の変化を調べる同化箱法が利用されてきた。しかし、太陽光下では箱で覆うと葉温が高くなるため、屋外の自然環境下の光合成速度の測定には不確実性が伴う。また、装置は比較的大型であり、水田や森林の場合は足場の悪さや電源環境がないため光合成の現場観測が困難である。近年提案された葉のクロロフィル蛍光や熱放散に基づく光合成速度の算出理論式は、光合成の現場観測への応用に期待できる。そのために必要な気孔コンダクタンスは蒸散による気化熱ひいては葉温に影響するため、葉面熱収支から逆推定できると考えられる。

目的

 蛍光・熱放散・葉面熱収支法に基づいた植物の光合成速度の測定原理を新規開発する。

方法

 (1)数種の植物を育成し、ポロメータを用いた気孔コンダクタンスの実測値と葉面熱収支法から求めた推定値を比較・検証し、気孔コンダクタンスの推定モデルを開発する。
 (2)蛍光・熱放散・葉面熱収支法に基づく新型の光合成装置の設計・開発ならびに、同原理に基づく光合成速度の推定モデルを開発する。また、従来型と新型の光合成装置による純光合成速度の日変化を比較・検証し、新型装置の有効性を検討する。

期待される成果

 本手法では葉を箱で覆わないため、自然環境下の光合成速度を高精度で測定できる可能性を秘めている。また、電池駆動で可搬性が高い装置を作成できるため、水田のイネや森林樹木の光合成速度の測定も容易になる。植物の光合成の現場観測の知見は、植物に対する環境ストレス診断、光合成に関わる生理生態学的研究への貢献、地球温暖化研究の発展といった波及効果が期待できる。また、本手法は衛星による光合成観測にも応用が期待できる技術である。