植物研究助成

植物研究助成 32-14

超暴風台風による樹木風倒メカニズムの分析と被害林再生戦略の検討

代表研究者 千葉大学 教育学部
助教 田邊 純

背景

 地球温暖化による日本列島南岸の海水温の上昇は、超暴風台風の本州への上陸を増加させている。令和元年台風15号は千葉県を中心に大量の倒木を引き起こし、広域長期の停電により社会生活に大きな影響があった。この台風では、従来被害が少なかった常緑広葉樹でも倒木が発生しており、防風林や自然植生への影響も危惧される。森林の気候変動適応を考える上でも、強大台風に対する常緑広葉樹の風倒メカニズム研究は重要である。

目的

 幹折れリスクを評価するため、常緑広葉樹の抗力係数を測定し、風荷重で生じる樹幹の曲げ応力を推定する。抗力係数に及ぼす樹形や林内環境の影響を調査し、暴風による常緑広葉樹の幹折れリスク評価の精度向上を目指すとともに、リスクを下げる樹形誘導等の森林・里山・緑地の管理方法の提案に資する。

方法

 2022年に共同研究者の小林達明(千葉大学園芸学部教授)らと実施した研究から拡張し、2023年度は以下の2点について調査・研究を行う。

1)間伐直後の林分における間伐率が抗力係数に及ぼす影響
常緑広葉樹が優先する防風保安林において、異なる間伐率となるようプロッ トを設定し、抗力係数を測定する。間伐率の違いによる幹折れリスクの違いを評価し、暴風台風に安全な間伐率への提案を計る。

2)樹冠形状・樹形が抗力係数に及ぼす影響(松戸モデル試験)
千葉大学松戸キャンパス内に設定したモデル試験林において、植栽密度(密・疎・単木的)が抗力係数に及ぼす影響を複数の広葉樹について測定することで、抗力係数に寄与する樹冠形状や葉分布の影響を明らかにする。

期待される成果

 風倒害リスク評価は針葉樹に関するものが多く、広葉樹に関する知見の蓄積 は重要である。特に、広葉樹林において、異なる管理が行われた林分を対象に抗力係数が測定された例はなく、広葉樹林―里山や緑地帯を含む―の今後の管理において、非常に貴重な知見を提供できることが期待される。