植物研究助成

植物研究助成 32-24

河川に造成する遊水地が水生植物の多様性に与える効果の解明

代表研究者 国立科学博物館
研究主幹 田中 法生

背景

 河川に造成される遊水地は、洪水を一時的に貯留し、下流の水位を低下させる役割を持つが、付随的に水生植物の保全地の機能も期待される。特に、水田などの利用地である場合、その土壌中の埋土種子からの水生植物の再生や、遺伝的多様性の向上も期待できる。しかし、遊水地の造成とその後の経過・管理方法が、水生植物の再生と種および遺伝的多様性に及ぼす影響に関する知見は乏しい。そのため、遊水地の造成の際に、水生植物の再生や保全は考慮されておらず、洪水防止機能との両立を図るための造成管理指針もない。
 本申請研究の調査地である利根川水系の遊水地での事前調査において、多様な水生植物が発見された。これにより、遊水地を造成することで、遊水地の本来の機能を保ちながら、水生植物の多様性を向上し、健全な河川生態系を再生できる可能性があることがわかった。

目的

 本研究では、造成直後から経過年の異なる遊水地5ヵ所と周辺の既存環境(河川、水田等)の水生植物の種構成と遺伝的多様性を比較調査し、遊水地の造成と経過年および管理方法が水生植物の多様性に与える効果を解明することを目的とする。

方法

 1)調査地:栃木県の遊水地群。遊水地はいずれも水田利用地に造成されたものである。2)種構成の調査:各調査地に生育する水生植物を網羅的に探索し、種多様性を評価する。3)遺伝的多様性の調査: DNA解析により遺伝的多様性を検出する。4)総合考察と管理指針の検討:上記調査により、遊水地の造成と経過年および管理方法が水生植物の種構成および遺伝的多様性に与える影響を解明し、水生植物の再生・保全のための遊水地の造成管理指針を示す。

期待される成果

 気候変動による洪水のリスクは今後さらに増大すると予測されるため、各地域で遊水地の造成の計画が進められている。本研究により、遊水地造成の水生植物多様性回復と保全への有効性と造成・管理指針が示されれば、今後の日本全国での遊水地の造成において、水生植物の再生・保全を考慮した造成・管理が行われると期待できる。これは、人と自然の共生を見据えた河川管理への新しい展開を促進するものとなる。