植物研究助成

植物研究助成 33-10

車載ライダーを用いた植物生態系の相互作用に関わる飛翔性昆虫分布の可視化

代表研究者 京都大学 生存圏研究所
特任准教授 矢吹 正教

背景

 植物生態系は、昆虫などの他の生物との相互作用によって形成されており、植物生育において送粉者および植食者となる昆虫よる影響を正確に理解することは重要である。また、生産性だけでなく環境負荷低減においても効果が期待されるデータ駆動型農業生産技術の発展には、多様な植物生態情報のデジタル化が必須となっている。植物を取り巻く生態系機能のうち昆虫が関与する要素として、効率的に送粉昆虫による効果を把握したり害虫防除したりするためには、場所ごとの昆虫の生息密度を精密にモニタリングすることが有効となる。

目的

 植物生態系における昆虫との相互作用の理解に資する計測手法を開拓する。具体的には、高距離・高時間分解能が特徴の車載ライダーを用いて、圃場を飛翔する昆虫密度の水平分布を短時間で可視化する手法を提案する。

方法

 大気エアロゾル計測用に開発された車載ライダーを、昆虫計測用に最適化する。このライダーを水平移動観測に適用することで、車道から数百メートル内の昆虫分布が可視化できる。本研究課題では、昆虫密度計測用ライダーを用いた農地や果樹園での実証観測を行い、植物生態系に関与する飛翔性昆虫分布の特徴を明らかにする。

期待される成果

 面的に飛翔性昆虫分布を正確に捉えることは、植物種や大気・土地利用環境等に依存した植物生態系における昆虫との相互作用の理解深化に繋がる。また、作物・農地診断にICTを活用したスマート農業の発展により、ドローンによるピンポイントの農薬散布やレーザを用いた害虫駆除手法などが提案されている。これら最先端の防除技術をより効果的に現場に投入するためにも、本研究課題で開発する広域の害虫分布情報を短時間で把握する技術が役立つと期待される。