植物研究助成

植物研究助成 33-14

キノアの耐塩性とセシウム吸収における表皮ブラッダー細胞の役割の解明

代表研究者 日本大学 生物資源科学部
教授 磯部 勝孝

背景

 作物生産が困難である塩類集積地でも作物を生産することと、原子力施設から土壌に蓄積された放射性物質を安価で容易に除去する技術を確立することは重要である。キノア(Chenopodium quinoa Willd.)は耐塩性が高く、さらに高いセシウム吸収能も有しているが、それには植物体表面にある表皮ブラッダー細胞(EBC)の存在が大きい。しかし、キノアの耐塩性やセシウム吸収能にEBCがどれだけ貢献しているかは不明な点が多い。

目的

 本研究の目的はキノアでより耐塩性やセシウム吸収能高い品種を育成するにはどうすればよいか明らかにすることで、特にキノアが持つEBCに注目し、EBCがキノアの耐塩性やセシウム吸収能にどれだけ貢献しているか明らかにする。また、キノアの機能を利用して塩類が集積して作物の栽培が困難な地域での作物生産やセシウムのファイトレメディエーションに貢献することを目的とする。

方法

 研究目的を達成するために、以下の実験を実施する。
実験1 キノアの耐塩性におけるEBCの役割
 1.耐塩性の品種間差とEBCの大きさ密度及びEBC内の塩濃度の関係について
 2.EBCの有無がキノアの耐塩性に及ぼす影響
実験2 キノアのセシウム吸収に及ぼすEBCの役割
 1.どの程度セシウムを施用するとセシウムによるストレスを受けるか
 2.セシウムストレス下でのEBCと葉内でのセシウム濃度の比較
実験3 塩化ナトリウム施用によるセシウムによるストレス回避の可能性
 1.適量の塩化ナトリウム施用で生育ストレスを回避できるか?
 2.EBCの有無がセシウムによるストレス回避に影響を与えているかの検証

期待される成果

 本実験の結果、耐塩性と葉でのEBC密度や大きさ、EBC内のナトリウム濃度等と関連が認められた場合、より耐塩性の高い品種を育成する場合のひとつの指標が明らかになる。今回の研究で耐塩性同様にセシウム吸収能も葉でのEBCの密度や大きさ、EBC内のセシウム濃度と関係があることが明らかになれば、よりセシウム吸収能の高い品種を育成する時の指標となる。以上より耐塩性の高いキノアやセシウム吸収能の高いキノアをより早く育成できる。