
植物研究助成 34-01
エゴノキ種子と種子散布者の共進化の検討
代表研究者 | 大阪公立大学理学部生物学科 准教授 吉川 徹朗 |
【 背景 】 |
植物の果実・種子の形質は種内で大きな地域変異を示すことがある。動物散布の植物における、こうした地域変異は、種子散布を行う動物との相利共生関係によって生み出された可能性があるが、その実態の解明は進んでいない。日本全国に分布するエゴノキ科樹木エゴノキStyrax japonicusには、種子サイズに明確な地域差が存在する。エゴノキの種子を散布しているのは、種子の貯食を行う鳥類ヤマガラSittiparus variusであり、ヤマガラは嘴で種子を割って食べるが、種子の一部を土壌などに貯えることで散布者となる。ヤマガラにも嘴サイズや体サイズに明確な地域変異がある。エゴノキの種子サイズとヤマガラの嘴サイズには強い対応関係が生じている可能性がある。 |
【 目的 】 |
そこで本研究は、これら2者の間に共進化が生じている可能性を検証することを目的として、日本各地でエゴノキの種子を採取してサイズや硬度を計測し、各地域のヤマガラの嘴サイズを計測し、両者の間に対応関係が見られるかを検討する。 |
【 方法 】 |
日本列島の複数地域において、エゴノキの種子サイズ・硬度およびヤマガラの嘴サイズを計測し、これらのあいだに対応があるかを検証する。エゴノキ種子は各地域で採取してサイズを計測し、ヤマガラの嘴サイズは博物館標本で計測する。さらにヤマガラによるエゴノキ種子の採餌成功率・採餌効率が、種子サイズに応じてどう変化するかを野外実験で調査する。嘴サイズの異なる地域のヤマガラに様々なサイズの種子を与え、採食行動をビデオ撮影し採餌成功率などを計測する。 |
【 期待される成果 】 |
植物種子と種子捕食者の形態のあいだでは明確な共進化が生じた事例が知られているが、植物種子と種子散布者とのあいだの共進化を示した研究はいまだ存在しない。本研究で提示された仮説を検証することで、種子散布をめぐる特定の植物と動物との密接な相利共生関係が、強い共進化を引き起こすことを実証することができ、これは動植物間相互作用の生態・進化研究に大きなインパクトを与えると期待できる。 |