
植物研究助成 34-02
UAVとメタゲノム解析を用いた植物−土壌フィードバックの評価
代表研究者 | 東京情報大学総合情報学部 教授 富田 瑞樹 |
【 背景 】 |
近年、アーバスキュラー菌根菌(AM菌)と共生する樹種(AM樹種)は多様な樹種からなる森林を構成する一方、外生菌根菌(EM菌)と共生する樹種(EM樹種)はその樹種が優占する森林を構成することが知られている。これは菌根菌の特性の違いにより、①AM樹種の周辺には土壌性病原菌が蓄積し、同種実生の定着を阻害する「負のフィードバック」が、②EM樹種の周辺はEM菌が蓄積し、その菌根菌ネットワークが同種実生の定着を促進する「正のフィードバック」が、それぞれ作用するためとされる。 こうしたフィードバックが成木間でも作用するならば、AM樹種優占林に単木的に生育するEM樹種の成木には土壌性病原菌による感染が、EM樹種優占林に単木的に生育するAM樹種の成木には共生可能なAM菌の少なさがそれぞれ作用し、成長に負の影響が現れる可能性がある。また、土壌の改変を伴う人工林においては、菌根共生による樹木の資源利用効率が低下し、成長に負の影響が現れる可能性がある。 |
【 目的 】 |
本研究はAM樹種およびEM樹種の混交率や撹乱履歴が異なる森林の林冠木を対象にドローンとゲノム解析を用いて、①林冠木の成長の指標としての植生指数、②林冠木の根圏における土壌の菌根菌群集と土壌微生物群集を明らかにし、両者に関係があるか、それは混交率や撹乱履歴によって異なるかを検証する。 |
【 方法 】 |
AM樹種およびEM樹種の混交率の異なるスギ林と、撹乱履歴の異なる海岸クロマツ林、比較対象として植物研究園を調査地とし、ドローンにより樹冠ごとの植生指数を求める。対象木の根圏における土壌からゲノムDNAを抽出し、真菌類を対象としたメタゲノム解析により、菌根菌群集と土壌微生物群集の組成と構造を調べる。 |
【 期待される成果 】 |
森林における生産性などの生態系機能を高める要因の一つとして、樹木群集および菌根菌群集と土壌微生物群集の関係性に関する基礎的知見を蓄積できる。また、針葉樹人工林の広葉樹林化や、津波撹乱後の海岸クロマツ林の再生における菌根菌群集の有効利用への応用可能性がある。 |