
植物研究助成 34-04
御蔵島に生育する春咲きダイモンジソウの実態解明
代表研究者 | 富山県立大学工学部教養教育センター 助教 孫田 佳奈 |
【 背景 】 |
植物の開花の季節性(e.g. 春咲き、秋咲き)は、ほとんどの場合、科や属、種レベルの系統ごとに遺伝的に決まっている。個体の生育する局所環境に応じて開花時期は多少の変異を示すものの、季節性が変化する例は少ない。日本列島に広く分布するダイモンジソウは「秋咲き」の植物であり、9-10月に開花する。しかしながら、御蔵島の市街地には4月に開花する「春咲き」集団が確認されている。 |
【 目的 】 |
本研究の目的は、御蔵島の市街地に生育する「春咲きダイモンジソウ」の実態を明らかにすることである。以下に3つの具体的な課題を設定する。春咲きダイモンジソウ集団の… 1.開花時期は他集団と明瞭に異なるのか?遺伝的に固定しているのか? 2.開花時期の違いを生じる環境要因は何か? 3.開花時期の違いは他集団との遺伝的分化を促進しているのか? |
【 方法 】 |
上記の1-3の課題に対応して、以下の実験調査を行う。市街地の春咲きダイモンジソウ集団に対して、御蔵島内の他集団を比較に用いる。 (1)開花時期の調査:現地調査、標本調査、圃場での栽培実験により開花時期を明らかにする。 (2)生育環境の調査:生育場所の温度(気温と土壌温度)と光環境(強さと質、実質的な日長)を測定し、春咲き集団の生育する局所環境を明らかにする。 (3)集団間の遺伝的分化の推定:遺伝構造および遺伝子流動の推定を行う。開花時期の違いによって遺伝子流動が妨げられることで、春咲き集団と他集団では遺伝的な分化が生じているか否かを検証する。 |
【 期待される成果 】 |
小規模な地理的スケールで生じる開花時期シフトについて、その遺伝的背景(遺伝的に固定されているのか、それとも可塑性によるものか)とそれを引き起こす環境要因を明らかにする。さらに、開花時期シフトが集団分化に及ぼす影響を検証することができる。 |