植物研究助成

植物研究助成 34-07

新しい染色体数がみつかったユノミネシダ類の種内構造の解明

代表研究者 香川大学教育学部
教授 篠原 渉

背景

 ユノミネシダ(Histiopteris incisa)は汎世界的に分布するシダ植物のひとつであり、伊豆半島を北限としている。これまで申請者はユノミネシダに2つの進化学的種があり、両種共に世界に広く分布することを明らかにした。また2つの進化学的種は倍数性との高い対応を示すこと、そしてユノミネシダに新しい染色体数が存在することを明らかにした。すなわちこれまでユノミネシダの基本数は、2n = 96の2倍体と2n = 192の4倍体のみが報告されていた。申請者は新たに2n = 94の2倍体と2n =188の4倍体が存在することを明らかにした。この発見はユノミネシダ属全体の基本数が異なることを意味する重要な発見である。

目的

 本研究では、①日本国内でそれぞれの染色体数をもつユノミネシダがどのような分布パターンを示すのかを明らかにすることでユノミネシダ類の種内構造を明らかにする。また②伊豆半島の集団についても詳細に染色体数の調査を行い、集団内に異なる染色体数をもつ個体が含まれているかどうかを明らかにする。

方法

 染色体数の観察は根端の押しつぶし法で染色体数決定する。正確な染色体数のカウントには、根端を採取してからの迅速な薬剤処理が必要である。しかしユノミネシダは移植が難しく、そのことが染色多数の観察の障壁となってきた。そこで、植物の育成管理の後に染色体を観察する方法に加えて、現地で根端を採取し、近隣の研究施設でただちにキノリン処理から酢酸による固定までを行い、その後、持ち帰るという方法を併用する。

期待される成果

 シダ植物では染色体数が異なる異数体が種内や近縁種群に存在することはまれではない。ユノミネシダには2つの進化学的種が含まれていることが申請者の研究から明らかになっており、種が異なることに加えて染色体数までもが異なる個体が見つかったことは、従来の形態種ユノミネシダ内に複雑な構造が存在することが期待できる。