
植物研究助成 34-09
精密模型を利用した風荷重に対する根系全体の力学的ストレスの計測
代表研究者 | 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員 宮下 彩奈 |
【 背景 】 |
森林では毎年のように風害(林木の幹折れや根返り)が発生する。幹の強度が直径や弾性係数からおよそ推定できるのに対し、根返りに対する強度には不明な点が多い。引き倒し試験によって根系の強度には根の太さや深さ等が関係することが知られているが、地中に存在する根系は非破壊的に継続した成長や力学的ストレスのモニタリングが難しく、地上部が風に吹かれたときに根系がどのような力学的ストレスを受けているのか、それが根系構造とどのように関係するのかはよく分かっていない。 |
【 目的 】 |
精密な樹木根系の模型を利用して地上部に作用する風荷重に対する根系全体の力学的ストレスパターンを解明する。実際の根系を基にした模型を作成し、ひずみゲージを用いて地上部と根系に作用する応力パターンを、変動の大きな風荷重に対応するため高頻度(10Hz)で同時計測し、関連性を解析する。また、任意の根の直径や断面形状、長さ等を変化させた模型を作成し、根系構造の変化よる応力集中箇所の変化を明らかにする。 |
【 方法 】 |
大型3Dプリンタを利用して可能な限り細根も含めた実物に近い(1/1-1/2のスケール)根系模型を作成する。プリンタで造形可能なサイズに制限があるため(約30×30×60cm)、分割して出力し接着する計画だが、実際の模型サイズや接着方法は試行しながら決定する。また、根と近い物性を持たせられるように素材を選定する。模型の基になるデータは5−10年生のスギで採集したものを利用予定である。作成した模型には、実際のスギの地上部を設置し、任意の場所にひずみゲージを貼った上で苗畑に埋設する。 |
【 期待される成果 】 |
本研究の成果は、根返りリスクをより正確に予測することにつながるため、森林のもつ防災上のリスクや機能を理解するうえで重要な知見となる。また、植物生理生態学的側面から、常に力学的なストレスにさらされながら生育する野外の樹木がどのように幹や根を形作っていくのかを解明する糸口となりうる。 |