
植物研究助成 34-10
光ファイバセンサを用いた樹木根の肥大成長特性の計測:曲げストレスに対する順応評価
代表研究者 | 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 森林研究部門 研究員 藤田 早紀 |
【 背景 】 |
近年、気候変動の影響による雨や風に起因する自然災害が近年頻発しており、森林を含む生態系を活用した防災・減災への期待が高まっている。今後、森林が持つ防災・減災機能を科学的に評価し、得られた知見を自然災害に強い森づくりに活かすことが求められる。そのためには、樹木がどのような戦略を持って、外力に対して順応しているのかを理解することが不可欠である。 樹木は主に太い根によって支えられており、根は正円以外にも、風が強い場所や斜面が急な場所では、楕円形、T 字、I 字など偏った肥大成長をすることが報告されている。これは、樹木が、風などの外力に対する根系の強度(根返り耐性)が高まるように「大きな力がかかる箇所の根を特異的に太くする」などして、根の肥大成長特性を最適化していると考えられる。しかし、これまでの研究は、根の破壊を伴った調査が主であり、樹木が実際に受けた荷重量と根の肥大成長の関係性や時間変化は未だ明らかになっていない。 |
【 目的 】 |
本研究の目的は、風などの外力(地上部への荷重)が根の肥大特性にどのような影響を及ぶすかを非破壊的に評価し、肥大成長の時間変化を明らかにすることである |
【 方法 】 |
第33回植物助成で確立した分布型光ファイバセンサを用いた計測技術で、外力による荷重の変化が根の肥大成長の方向性に及ぼす影響を明らかにする。具体的には、人為的に風ストレスを模倣した曲げストレスを施す個体と、施さない個体を設け、それぞれの個体の根に光ファイバセンサを施工し、肥大の分布を定期的に計測する。 |
【 期待される成果 】 |
本研究では、主要海岸林樹種であるクロマツに着目する。クロマツは、厳しい海岸環境で生育するため、風や波に対する高い力学的強度が求められる。今回得られた知見を海岸林管理に活かすことで、防風や津波減災機能の評価及び向上に貢献できると考えられる。 |