
植物研究助成 34-12
キノアの耐塩性とセシウム吸収における表皮ブラッダー細胞の役割の解明
代表研究者 | 日本大学生物資源科学部 教授 磯部 勝孝 |
【 背景 】 |
キノア(Chenopodium quinoa Willd.)は耐塩性が高く、さらに高いセシウム(以下、Cs)吸収能も有しているが、それには植物体表面にある表皮ブラッダー細胞(以下、EBC)の存在が大きい。しかし、キノアの耐塩性やCs吸収能にEBCがどれだけ貢献しているかは不明である。さらにEBCに蓄積された塩(Na)やCsはどのようにして無毒化されているかも明らかにされていない。これらの元素の過剰吸収に対してEBCがどのように機能しているかは、今後この植物を塩類集積地で栽培する際やファイトレメディエーションで利用する際に極めて重要である。 |
【 目的 】 |
本研究の目的は耐塩性やCs吸収能の高いキノアがEBCの中でどのようにしてNaやCsを無毒化しているかを明らかにすることである。すなわち、EBCのない変異体を用いてキノアの耐塩性やCs吸収能にEBCがどれだけ貢献しているか明らかにする。さらにNaやCsによる生育阻害を回避するためにEBCの中の液胞へのこれらの元素をどれだけ蓄積しているか明らかにする。 |
【 方法 】 |
実験1 EBCと茎や葉の細胞内でのNaやCs濃度の比較 葉と茎の表面からEBCを採取して植物体とEBCではどちらの方がNaやCs含量が高いか分析する。 実験2 EBCや体細胞での液胞の視覚的な明確化 液胞膜を蛍光物質で染色してEBCや体細胞における液胞の位置を視覚的に明らかにする。 実験3 液胞へのNaやCsの蓄積状況の解析 塩化ナトリウムや塩化セシウムを段階的に施用した条件で育成したキノアの葉や茎とEBCのNaとCs含量を原子吸光で測定する。さらに、細胞内でのNaとCsの蓄積位置を明らかにする。 |
【 期待される成果 】 |
キノアをはじめとする様々な植物の耐塩性やファイトレメディエーション能をより向上させるには植物のどのような特性や生理機構を改善すれば、能力が高まるのか明らかになると考える。 |