
植物研究助成 34-13
侵入外来生物スクミリンゴガイ耐性イネの解析
代表研究者 | 奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 教授 吉田 聡子 |
【 背景 】 |
侵入外来生物は、その繁殖能力の高さや捕食性の強さによって、従来の生態系を破壊し、農作物被害をもたらす。南米原産のスクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ,学名Pomacea canaliculata)は、もともと食材として日本に輸入されたが販路が開けず、逃げ出して野生化した貝が生態系の破壊や水田のイネを加害するようになり、近年大きな問題となっている。これまでに、スクミリンゴガイの食害に対し、物理的な卵の駆除や、農薬の使用、水田の水深調整による対策などが行われてきたが、現状の対策では被害を十分に防げていない。植食性病害虫の防除には、耐性品種の育種が有効であるが、現在までにスクミリンゴガイ耐性イネ品種の報告例はない。 |
【 目的 】 |
本研究では、スクミリンゴガイ耐性イネ系統を探索し、その耐性メカニズムを明らかにすることを目的とする。特に、耐性イネが生産する代謝物に着目し、スクミリンゴガイの忌避反応をもたらす代謝物の同定と、耐性を司る遺伝子座の同定を目指す。 |
【 方法 】 |
世界のイネ系統の探索により単離したスクミリンゴガイ耐性イネ系統を材料とし、揮発性代謝物の解析とビデオモニタリングシステムを利用したスクミリンゴガイ忌避反応の解析をおこない、忌避反応の原因となる代謝物を同定する。また、組み換え自殖系統などを用いた食害試験により、スクミリンゴガイ耐性に関わる遺伝子座の同定を行う。 |
【 期待される成果 】 |
スクミリンゴガイは、世界および日本の侵略的外来生物ワースト100リストに入っており、世界的にも大きな問題となっている。日本では、水田や水路で繁殖し、田植え期のイネの幼苗を捕食して被害をもたらすのみならず、水田周辺の水辺にも繁殖し、従来の生態系に大きな影響を与えている。地球の温暖化に伴い、その繁殖地域は年々拡大している。本研究により、スクミリンゴガイ耐性機構が明らかになれば、スクミリンゴガイに食害されない作物の育種が可能になる。また、スクミリンゴガイの忌避につながる代謝物が同定されれば、自然生態系の中への貝の侵入を防止する方法の開発へつながると期待される。 |