
植物研究助成 34-14
特定外来生物ナガエツルノゲイトウの繁殖力および再生力に関する特性評価
代表研究者 | 東洋大学生命科学部生物資源学科 教授 梅原 三貴久 |
【 背景 】 |
ナガエツルノゲイトウ(Alternanthera philoxeroides)は南米原産の多年性水陸両生植物で、主に河川や排水路などの水中、畦畔や水田・畑地で大群落を形成し、通水・利水障害をもたらす。繁殖力および再生力が旺盛で駆除が大変困難なことから、「特定外来生物」に指定されている。すでに26都府県で移入定着が確認されており、在来植物との競合による植物生態系の撹乱が深刻化している。植物生態系の回復と保全には、ナガエツルノゲイトウの繁殖力および再生力の特性を明らかにすることが急務である。 |
【 目的 】 |
本研究では、ナガエツルノゲイトウが陸上および水中環境でどのような生育特性を示すのかを明らかにし、植物体再生メカニズムを解明して植物生態系の保全の一助とする。まず、この植物の生存環境適応力を評価するため、陸上および水中における形態や光合成能力を比較する。また、この植物は節から活発に発根、茎断片からシュートを再生できることから、内生植物ホルモンの変動および器官形成に関わる遺伝子の発現変動を解析する。 |
【 方法 】 |
まず、陸上および水中環境におけるナガエツルノゲイトウの成長に伴う形態変化を明らかにする。次に、光合成解析装置を使って、陸上および水中環境におけるナガエツルノゲイトウの二酸化炭素の同化速度、クロロフィル蛍光、光合成速度等を評価する。さらに、植物組織片からの再生力を評価するため、植物の生長を制御する植物ホルモンの分析を行う。RNA-seqにより、器官形成に関わる遺伝子の発現変動を網羅的に解析する。これらのデータを統合することで、ナガエツルノゲイトウの生育に関する基本特性を明らかにする。 |
【 期待される成果 】 |
これまでナガエツルノゲイトウの特性は、「生育が旺盛」といった主観的な観測によって特徴付けられてきた。そのため、効率的な駆除方法の確立に至っていないと考えられる。本研究では、栽培が禁止されている特定外来生物の飼養等許可を得て、安定的な環境下で培養・栽培試験を行うことで、再現性の高いデータを得ることができる。本研究で得られた定量的な生育特性や生理機能に関わるデータを元にナガエツルノゲイトウの弱点を見つけ出し、将来ナガエツルノゲイトウが繁茂しにくい環境作りと防除技術の確立へ発展させる。 |