
植物研究助成 34-16
生物分布境界線「渡瀬線」を跨ぐ島嶼群における野生キイチゴ種内の遺伝的多様性評価
代表研究者 | 弘前大学農学生命科学部 助教 登島 早紀 |
【 背景 】 |
生物分布地理区とその境界は、生物多様性の形成過程や境界周辺環境への適応を理解するうえで重要である。バラ科キイチゴ属のナワシロイチゴ(Rubus parvifolius)は、単一種でありながら、北海道から沖縄まで自生する野生キイチゴである。先行研究より、日本全国に自生する該当種の遺伝的解析から、植物分布地理区の境界線として知られる「渡瀬線」を境に遺伝子型が異なる可能性が示唆された。しかし渡瀬線が存在するトカラ列島においては現在悪石島と宝島の2島のみでの調査であり、渡瀬線を境として遺伝子型が異なる個体群が存在するのか、またその周辺の島嶼群にてどのような空間的集団構造であるか明らかにするためにはさらなる検証が必要である。 |
【 目的 】 |
本研究では、トカラ列島にある渡瀬線やその周辺環境においてどのような種内多様性があるのかを明らかにすることを目的とし、1.渡瀬線周辺の島嶼に自生する該当種のサンプリングを行い、2.該当種内の遺伝的多様性評価を行う。 |
【 方法 】 |
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本研究では、前述した2つについて以下のように実験を進める。
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【 期待される成果 】 |
本研究では日本に広く分布する野生植物の遺伝的多様性や適応進化に関する新たな知見を提供することが期待される。さらに渡瀬線を中心とした生物多様性パターンの形成過程や進化的要因を明らかにし、それに基づいた渡瀬線の形成等の地史学的知見に繋がると考えられる。また、世界の6つの植物区系の境界付近では様々な種の多様性が確認され生態系を維持されている。本研究では日本だけでなく世界の分布境界線付近での生物多様性保全に向けた科学的根拠を提供し、世界的な生物多様性保全に向けた新たな知見として貢献する。 |