植物研究助成

植物研究助成 34-17

茅葺きの持続性を脅かす環境変動による強度低下原因となる重金属障害のEGCGによる毒性緩和

代表研究者 東海大学生物学部
教授 岩井 宏暁

背景

 地球温暖化に伴うゲリラ豪雨が原因で引き起こる土壌の酸性化により、毒性重金属が溶出する。溶出した金属イオンは植物の成長を阻害する。土壌酸性化による毒性金属イオンにより細胞壁成分が変化することにより、イネの根と葉の強度が弱くなるが、カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCG)により緩和される。このEGCGによる毒性金属緩和方法について、特許申請(特願2023-11254)した。カテキンという身近な天然物であるために、土壌処理に対して、一般市民からの抵抗感が少ない。実際の現場である茅場でも、野生のイネ科植物である茅の強度が酸性雨により、近年折れやすい性質を示すようになり、建築材としての性質が低下してきている。この原因として重金属イオンと細胞壁成分との関連性があるのではと考えられている。

目的

 現在までの研究により、分泌性の多糖類や糖鎖が金属と結合し排除するという新しい毒性緩和方法のメカニズムの解明に向けて多くの成果が得られ、成果を元に特許申請までに至った。EGCG投与により茅場の質の低下を防げるかについて、生理学的、生態学的なアプローチを行い、茅葺きの持続性を脅かす環境変動による茅の質低下原因の解明を行うことで、茅場の持続性の維持に貢献する。

方法

 (1)ペクチン改変イネと野生イネ(茅)を用いた毒性金属緩和動態の観察:ペクチンと結合性が強い重金属であるアルミニウム、銅、鉛、ストロンチウム
(2)野生イネ(茅)を用いた分泌性多糖類による金属排除過程の可視化(3)特性変化した茅の解析

期待される成果

 環境変動による茅の質低下原因の解明とEGCGによる毒性緩和による保全の研究を進めることで、各茅場の土壌をどのように改良することで茅場の質の低下を防げるかについて、生理学的、生態学的なアプローチを行う。このことは、学術的な成果が見込まれるだけでなく、茅場の持続性の維持に貢献し、SDGsの目標の達成にも大きく貢献していく効果があると考えている。