植物研究助成

植物研究助成 35-02

UAVとメタゲノム解析を用いた植物-土壌フィードバックの評価

代表研究者 東京情報大学総合情報学部
教授 富田 瑞樹

背景

 樹木の資源獲得戦略に重要なもののひとつは菌根共生である。近年、アーバスキュラー菌根菌(AM菌)と共生する樹種(AM樹種)は多様な樹種からなる森林を構成する一方、外生菌根菌(EM菌)と共生する樹種(EM樹種)はその樹種が優占する森林を構成することが知られてきた。これは菌根菌の特性の違いにより、AM樹種の周辺には土壌性病原菌が蓄積し、同種実生の定着を阻害する「負のフィードバック」が、EM樹種の場合はEM菌が蓄積し、その菌根菌ネットワークが同種実生の定着を促進する「正のフィードバック」が作用するためとされる。
 土壌からのフィードバックが成木間でも作用するのであれば、AM樹種優占林に生育するEM樹種には多くの土壌性病原菌による感染が、EM樹種優占林に生育するAM樹種には共生可能なAM菌の少なさが作用し、成長に負の影響が現れる可能性がある。また、土壌の改変を伴う人工林においては、改変後に土壌からのフィードバックが失われ、樹木の資源利用効率が低下し、成長に負の影響が現れる可能性がある。一方、津波撹乱後に自然更新した樹木は、土壌に生残した菌根菌と共生関係を結び順調に成長する可能性がある。

目的

 本研究はAM樹種およびEM樹種の混交率や撹乱履歴が異なる森林の林冠木を対象に、UAVとゲノム解析を用いて、林冠木の植生指数と周辺土壌中の菌根菌群集との関連性を明らかにする。

方法

 AM樹種およびEM樹種の混交率の異なるスギ林と、撹乱履歴の異なる海岸林、植物研究園を調査地とした調査結果に応じてサンプルサイズを拡大する。もしくは函南原生林と栗駒山ブナ林を対象に一般性を向上させる。マルチスペクトルカメラ搭載UAVを用いて林冠木の植生指数を求める。林冠木の根圏における土壌からゲノムDNAを抽出し、真菌類のDNAバーコーディングに適したITS領域等を対象とするメタゲノム解析により、菌根菌群集の組成と構造を調べる。

期待される成果

 森林における生産性などの生態系機能を高める要因の一つとして、樹木群集および土壌の菌根菌群集の関係性に関する基礎的知見を蓄積できる。また、針葉樹人工林の広葉樹林化や、津波撹乱後の海岸林の再生における土壌の菌類群集の有効利用に対する応用可能性がある。