植物研究助成 35-03
伊豆半島における蜂蜜と蜜源植物中における好乾性真菌の多様性
−生態解明と抗チョーク病物質の探索−
| 代表研究者 | 日本大学薬学部 教授 廣瀬 大 |
【 背景 】 |
| ミツバチのチョーク病は、幼虫をミイラ化させる届出伝染病であるが、現在、国内で有効な治療薬は存在しない。本病の原因菌である Ascosphaera apis は、低水分活性環境下で長期間生存する好乾性という特殊な生理的特徴を有する。一方、高糖度の蜂蜜には多様な好乾性真菌が生息している。同じ生態的地位を共有する真菌間では生存競争のための拮抗作用が働くため、蜂蜜中の好乾性真菌がチョーク病菌に対する抗真菌物質を産生しているとの仮説に基づき、本計画を立案した。 |
【 目的 】 |
| 市村清新技術財団植物研究園を拠点に、(1)研究園および伊豆半島の主要蜜源植物と蜂蜜から好乾性真菌を網羅的に分離し、(2)メタバーコーディング解析により蜂蜜中真菌の植物起源と伝播経路を特定、(3)得られた菌株から抗チョーク病菌活性物質を探索し、その化学構造を決定することを目的とする。 |
【 方法 】 |
| 1. サンプリングと好乾性真菌の分離培養: 植物研究園および周辺の自然林において、主要な蜜源植物(花蜜・花粉)と蜂蜜を収集する。好稠性培地を用いて好乾性真菌を選択的に分離し、申請者の過去の新種発見実績に基づきライブラリー化を行う。 2. メタバーコーディングによる生態解析: 蜂蜜および花蜜から抽出した環境DNAに対し、次世代シーケンサーを用いた情報工学的解析を実施する。真菌と植物の両マーカーを同時に解析することで、どの蜜源植物に由来する蜂蜜にどの真菌が含まれるかを統計的に同定し、菌類の生態学的供給源を解明する。 3. 抗チョーク病菌活性評価と化合物の同定: 分離菌株の培養抽出物を用い、チョーク病菌に対する生育阻害活性を微量液体希釈法でスクリーニングする。陽性株については、各種クロマトグラフィーおよび機器分析(NMR, MS)を用いて活性本体である化合物の同定・構造決定を行う。 |
【 期待される成果 】 |
| 学術的には、未利用遺伝資源である好乾性真菌の多様性を解明し、植物-昆虫-生産物を繋ぐ微生物の伝播生態を明らかにする成果となる。社会的には、治療薬のないチョーク病に対し、伊豆の生態系由来の抗真菌シーズを提供することで、地域養蜂産業の持続的発展とブランド保護に貢献するものである。 |














