植物研究助成

植物研究助成 35-06

新規ガス交換測定原理にもとづく植物ウェアラブル型光合成センサの開発

代表研究者 広島大学大学院統合生命科学研究科
准教授 冨永 淳

背景

 植物の成長や生存に深く関わる光合成や蒸散の環境応答は、植物の生理生態や農業生産性を理解するうえで長年の研究対象となってきた。ガス交換測定は、生きた植物の光合成によるCO2吸収や蒸散を直接定量できるため、主要な解析手法として広く用いられている。また、現場での測定も可能なことから、植物の健康状態を評価する光学的リモートセンシング技術の“ゴールドスタンダード”とされている。しかし、従来の装置は大型・高価であり(数kg〜10 kg、数百万〜1千万円超)、自然環境での多点モニタリングには不向きである。この課題を解決すべく、申請者は新たなガス交換測定原理を開発し、手のひらサイズのウェアラブル型蒸散センサを実現した。

目的

 新原理を用い、数g・数千円規模の小型・低コストで、自然環境での連続測定が可能なウェアラブル型光合成センサを開発する。

方法

 本測定原理は開放空間での拡散現象を利用するものである。これにより、従来の通風式装置のように密閉チャンバーへ空気を送り込む必要がなく、駆動部を排したシンプルな構造が可能となる。さらに、近年急速に高性能化が進む小型半導体ガスセンサを採用することで、一層の小型化を実現する。

期待される成果

 “コネクティッド・カー”のように植物をネットに接続することで、農作物のバイタルサインを高度な環境制御や栽培管理にフィードバックできるようになる。また、あらゆる植物をバイオセンサ化し、大気汚染や気候変動との相互作用を世界規模でモニタリングできるようになる。本センサ技術は、植物生理生態学の新たな研究ツールとしてだけでなく、農林業における生育状態の可視化、植生リモートセンシング技術の発展、さらには一般向けの科学教育や園芸分野など、幅広い応用が期待される。半導体センサの技術革新や低コスト化は、本センサのさらなる性能向上と普及を後押しする。