植物研究助成

植物研究助成 35-10

森林内河川水eDNA による植物群集動態解析

代表研究者 新潟大学自然科学系(農学部)
准教授 鈴木 一輝

背景

 森林生態系の健全性評価や持続的管理には、植物群集の時空間変化を把握することが重要であるが、従来手法には広域・長期観測上の制約がある。近年、環境DNA(eDNA)メタバーコーディングは、水や土壌中のDNA断片から生物群集情報を非侵襲的かつ効率的に取得可能な手法として注目されている。我々はこれまで、閉鎖系である森林内池水において、粒径別に分画した水中eDNAが周辺植生を反映し、画分ごとに異なる季節変動を示すことを明らかにしてきた。これらの変動は、植物の成長や開花、落葉といったフェノロジーに起因する可能性がある。一方で、河川のような開放系におけるeDNAの挙動や、森林植物群集との定量的対応関係は十分に解明されていない。

目的

 本研究は、植物群集およびフェノロジーを非侵襲的かつ定量的に把握するためのeDNA計測手法の検討を目的とする。河川水中に含まれる懸濁態・溶存態DNAの発生源や流出特性、粒径別挙動を整理し、種レベル解析に向けた手法の有効性を評価する。これらを通じて、森林モニタリングへの応用可能性を有する簡便かつ効率的な技術体系の構築に資する知見を得ることを目指す。

方法

 新潟県佐渡市北部の新潟大学佐渡自然共生科学センター附属演習林内に設置された林地流域および牧草地流域からなるペアキャッチメントを研究地点とする。両流域において降水量・流量を継続的に観測するとともに、定期採水および連続採水を実施し、粒径別ろ過および溶存態DNAの回収により河川水中の植物eDNAを包括的に解析する。さらに、トランセクト調査等による植生・フェノロジー情報および土壌DNA解析結果と統合することで、河川水中eDNAが反映する森林植物群集の時空間変動を定量的に評価する。

期待される成果

 本研究により、河川水中eDNAの起源や粒径別・時間的ダイナミクスが明らかとなり、森林植物群集を評価するための手法の有効性が示されると期待される。採水のみで広範囲の植生情報を取得可能となることで、森林管理や自治体による生態系評価やフェノロジーモニタリングへの応用が見込まれる。さらに、粒径分画や溶存態DNA捕捉、長リード解析を組み合わせることで、森林群集の時空間変動や種レベル構造の把握に関する基礎的情報の蓄積が期待される。