植物研究助成

植物研究助成 35-11

植物の栄養ストレスに応答したCa2+シグナル可視化技術の開発

代表研究者 東京理科大学創域理工学部
嘱託助教 新川 はるか

背景

 植物は周囲の栄養状態を感知し、根から無機塩類を吸収・輸送することで、生育や代謝を調節する。近年、細胞質カルシウム濃度([Ca2+]cyt)の時空間的振動パターンが、栄養状態の変化を迅速に伝達する生体内シグナルとして機能していることが注目されている。しかし、個々の無機栄養素に対して植物がどのような[Ca2+]cyt動態を示すのかついては体系的な理解が得られていない。したがって、統一した条件下で栄養条件の変化に伴う[Ca2+]cyt動態の変化を可視化・比較できる技術基盤の構築が強く求められている。

目的

 本研究は、植物がどの無機栄養に対して、どのタイミングで、どのような[Ca2+]cytシグナルパターンを示すのか、という問いに取り組む。これを明らかにすることで、植物が[Ca2+]cytシグナルという迅速な情報伝達手段を用いて、栄養獲得と恒常性維持を制御する分子機構の一端を解明する。

方法

 本研究計画ではCa2+レポーター蛍光タンパク質発現ゼニゴケを用いて、各種無機栄養の欠乏・過剰条件下で仮根先端における[Ca2+]cyt動態および、無機栄養に応答した表現型として仮根の伸長速度・形態変化を、共焦点顕微鏡を用いて高解像度・高時間分解能で可視化することで(図1①および②)、[Ca2+]cytのパターン変化が仮根伸長に果たす役割を明らかにする。さらに、Ca2+チャネル候補遺伝子変異株やCa2+キレーターを用いてCa2+シグナルを阻害し、無機栄養応答における[Ca2+]cyt動態の因果関係を解析する(図1③)。

図1

期待される成果

 本研究により植物が栄養環境の変化をどのように認識し、適切な成長応答を選択するかという上流機構の理解が大きく前進する。さらに、栄養ストレスに応答するCa2+チャネルの機能解明は、将来的なストレス耐性植物の育種ターゲットの探索にもつながる。また、栄養ストレスに伴う[Ca2+]cytシグナルを高精度で可視化する技術は、環境変動の早期察知や生体指標の創出に応用でき、植物生態系の保全・再生や持続可能な資源管理にも資する基盤技術となる。