植物研究助成

植物研究助成 35-12

茅葺きの持続性を脅かす環境変動による強度低下原因となる重金属障害のEGCGによる毒性緩和

代表研究者 東海大学生物学部
教授 岩井 宏暁

背景

 地球温暖化に伴うゲリラ豪雨が原因で引き起こる土壌の酸性化により、毒性重金属が溶出する。溶出した金属イオンは植物の成長を阻害する。土壌酸性化による毒性金属イオンにより細胞壁成分が変化することにより、イネの根と葉の強度が弱くなるが、カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCG)により緩和される毒性金属緩和方法について、特許(特願2023-11254)を申請した。さらに昨年度は、アルミニウムと結合する細胞壁部位を同定し、アルミニウム耐性を示す細胞壁改変イネ OsXTH19 の過剰発現株(OsXTH19-OX)を見出した。一方、実際の現場である茅場でも、野生のイネ科植物である茅の強度が酸性雨により、近年折れやすい性質を示すようになり、建築材としての性質が低下してきている。この原因として重金属イオンと細胞壁成分との関連性があるのではと考えられている。

目的

 本研究の目的は、分泌性多糖類・糖鎖による毒性金属排除メカニズムの解明、EGCG が茅の金属毒性を緩和し、品質低下を防ぐかを生理学的・生態学的に明らかにすることである。これまでの研究により、金属イオンが細胞外多糖や細胞壁成分と結合し毒性を緩和するという新規の知見を得ており、その成果を基盤として茅における金属排除機構を解明する。また、茅場の劣化要因となる毒性金属ストレスをEGCGにより軽減できれば、伝統的茅葺文化の保全に関わる具体的技術の開発につながる。

方法

 (1) また、アルミニウム耐性を持つことを2025年度に明らかとしたOsXTH19-OXイネと野生イネ(茅)を用いた毒性金属緩和動態の観察、(2)野生イネ(茅)を用いた分泌性多糖類による金属排除過程の可視化、(3)重金属により特性変化した茅の解析

期待される成果

 環境変動による茅の質低下原因の解明とEGCGによる毒性緩和による保全の研究を進めることで、各茅場の土壌をどのように改良することで茅場の質の低下を防げるかについて、生理学的、生態学的なアプローチを行う。このことは、学術的な成果が見込まれるだけでなく、茅場の持続性の維持に貢献し、SDGsの目標の達成にも大きく貢献していく効果があると考えている。