植物研究助成

植物研究助成 35-14

3D 点群データ解析による着生植物ハビタットの定量化手法の確立

代表研究者 広島大学大学院先進理工系科学研究科
助教 駒田 夏生

背景

 樹木の幹や枝を生育地(=ハビタット)とする着生植物は、その多様性・量ともに森林生態系を構成する重要な要素のひとつである。これらの植物は樹上の物理的構造を複雑化させることで、生物多様性の維持や養水分環境の安定化に寄与する。このため、着生植物のハビタットが樹上のどのような環境にどれほど存在するのかを解明することは、森林の生態系機能を理解するうえで重要な知見をもたらす。
 着生植物のハビタットの量や分布は、樹木の直径・種、枝の直径・傾斜角度、光や水の可用性といった要因に影響を受ける。しかし、樹木個体の形態の複雑さによるハビタットの定量の困難さや、着生植物発生量がピークに達する森林上層部(=林冠部)へのアクセスの困難さから、現在に至るまで樹木個体全体を対象として着生植物のハビタットを定量する試みはほとんど行われてこなかった

目的

 本研究は、樹木の詳細な立体構造をデータ化(=D点群データ化)し、これを着生植物の分布データおよび樹上環境要因データと統合する。これにより、樹木個体上における着生植物のハビタット量の正確な定量と、統計モデルによる林分スケールでの推定を行う

方法

 京都大学芦生研究林(京都府・冷温帯林)において、地上踏査とツリークライミングによって樹木個体を地上から林冠部に至るまで調査する。各樹木に対し、レーザー測量機と広角レンズ付カメラを使い、樹木個体の3D点群データを取得する。得られた点群データに、これまで蓄積してきた着生植物(維管束植物・蘚苔類・地衣類)の観察データ、樹上における光・水可用性データを統合し、ハビタット量を明らかにする

期待される成果

 着生植物には、ラン科の種をはじめ多数の希少種・絶滅危惧種が含まれる。本研究でハビタット量の実証と、その定量化手法を確立できれば、こうした希少種の分布推定精度の大幅な向上や、従来の研究で着目されてきた環境要因では十分に説明できなかった詳細な空間分布パターンの理解につながる。また、3D点群データの取得を地上から林冠部へ拡張することは、森林現存量評価や生態系サービス評価の高精度化といった応用研究への発展も期待できる。