植物研究助成

植物研究助成 35-16

伊豆半島固有アマギテンナンショウの送粉生態と遺伝的分化の解明

代表研究者 昭和医科大学 富士山麓自然・生物研究所
准教授 柿嶋 聡

背景

 サトイモ科テンナンショウ属は、日本列島に分布する53 種のうち、47 種が日本固有種であり、日本列島で独自に多様化したグループであると考えられている。花序の形態が多様化している一方で、遺伝的な分化は小さく、種間の系統関係は十分に解明されていない。また、テンナンショウ属の多くの種では、種ごとに特定の送粉昆虫を誘引することが明らかとなっており、送粉昆虫の違いが種間の生殖隔離機構として重要である。一方で、テンナンショウ属では多くの種の絶滅が危惧されている。絶滅危惧種の保全には、種内の遺伝的な分化を考慮した保全単位の設定や、送粉生態を含めた生態の把握が重要である。

目的

 アマギテンナンショウは、伊豆半島東部の狭い範囲のみに分布するとされてきた、伊豆半島に固有の絶滅危惧種である。申請者のこれまでの予備的な調査により、伊豆半島中部〜西部に複数の生育地が存在する可能性が示唆された。これらの個体群が本当にアマギテンナンショウであるのか、既知の個体群と遺伝的にどの程度異なるのかは、現状では不明である。そこで本研究では、遺伝解析により新産地の個体がアマギテンナンショウであることを確認したうえで、分布域全体の遺伝的構造を把握し、保全単位を検討する。さらに、送粉昆虫を調べることで、本種の繁殖に関わる基本的な生態情報を収集する。

方法

 伊豆半島全域を調査し、アマギテンナンショウの分布と生育個体数の把握を行う。野外調査では、遺伝解析用サンプルと送粉昆虫を採取する。採取した昆虫はDNAバーコーディングにより同定を行う。さらに、MIG-seq解析のデータを用いて、近縁種とともに系統解析を行い、新産地の個体がアマギテンナンショウであることを確認する。また、既知の産地を含めた生育地全体の遺伝的な分化を検証することで、保全単位を検討する。

期待される成果

 本研究の結果、これまで極めて狭い範囲にのみに分布するとされていたアマギテンナンショウの実際の分布が明らかになる。また、遺伝的な違いを踏まえた保全単位の設定が可能となり、将来的な保全計画の根拠となる情報を提供できる。さらに、近縁種との系統関係や送粉昆虫の違いが明らかになることで、本種がどのようにして伊豆半島で種分化したのかについての理解も深まる。