植物研究助成 35-19
植物根圏における炭素・電子循環ネットワークの生態学的構造と機能解明
| 代表研究者 | 九州大学大学院農学研究院 教授 東江 栄 |
【 背景 】 |
| 植物根圏は、光合成で固定された炭素が根圏滲出液(低分子有機酸・糖・アミノ酸など)として微生物代謝へ流入し、物質循環とエネルギー変換(電子移動など)が同時に進行する「生態学的ホットスポット」である。一方で、滲出液の化学組成が微生物機能(例:グロマリン生成、細胞外への電子放出など)をどのように制御し、その結果が炭素フローと電子フローにどうフィードバックするかは体系的に未解明である。したがって、根圏を「炭素循環と電子循環が接続する統合系」として捉え直す必要がある。 |
【 目的 】 |
| 植物根圏における炭素フラックスと電子フラックスの連関を定量化し、滲出液-微生物機能-炭素/電子フローの因果構造(駆動原理)を解明する。あわせて、植物種・湛水条件に依存した連関の変動要因を同定し、炭素貯留・温室効果ガス抑制・エネルギー創出を統合的に評価する基盤指標を提示する。 |
【 方法 】 |
| イネ/アイスプラント/シュロガヤツリを対象に、以下を実施する。 (1) GC-MS/LC-MSにより、根圏滲出液の化学組成を定性・定量する。 (2) アンプリコン解析(必要に応じてメタゲノム解析を併用)により、根圏・根内マイクロバイオームの群集構造・機能を評価し、炭素安定化指標(グロマリン、菌体外多糖、微生物ネクロマス等)と対応付ける。 (3) 灌水・落水条件下で植物-微生物燃料電池(P-MFC)系を構築し、発電菌の細胞外電子移動とメタン生成菌との競合を解析する。 (4) シュロガヤツリ浮体栽培により、富栄養化水域の浄化性能および温室効果ガス抑制効果を検証する。 データを統計モデルおよびネットワーク解析で統合し、因果構造を推定する。 |
【 期待される成果 】 |
| 根圏滲出液を起点に、炭素貯留(炭素安定化)・温室効果ガス排出抑制・発電・水質浄化を駆動する因果関係を明確化する。根圏を「制御可能な炭素・電子循環系」として再定義し、分散型バイオエネルギー生産モデルおよび炭素貯留型農法の設計・評価に資する基盤指標を提示する。根圏滲出液を起点とする炭素循環と電子循環の連関を「定量的に捉えられる基礎モデル」として確立し、将来のメタン抑制・発電・炭素貯留技術へ展開可能な基盤を構築する。 |














