地球環境研究助成

地球環境研究助成05-01

再生可能エネルギーによる水素とナノ金属薄膜を用いた革新的エネルギー生成法に関する研究

代表研究者
東北大学 電子光理学研究センター 特任教授
岩村 康弘

研究の背景・目的

 近年、ナノ構造金属(Ni, Cu等)と水素の系において、CO2を全く排出せず、化学反応に比べ、桁違いに大きい熱エネルギーを発生する異常発熱反応が報告されている。これは量子水素エネルギー(QHE)と呼ばれており、図1のように太陽光や風力など再生可能エネルギーにより水素を発生させ、その水素を燃料に発電や熱供給が可能である。QHE発電は通常の燃焼等に比べ、少なくとも1万分の1の燃料消費で同量の発電が可能であり、しかも有害な放射線は放出されないため、社会・経済的インパクトは非常に大きい。本研究では新規QHE反応手法の研究開発を行う。

図


研究内容・課題

 2016年、我々の研究チームは、真空容器内のナノ構造薄膜に水素を吸蔵させ、ヒーターで急加熱することで水素を薄膜中で拡散させ、異常発熱を起こす方法(図2)を考案。化学反応に比べ1万倍以上の発熱 (吸蔵水素あたり16keV/H;化学反応では通常eV/Hオーダ) を観測した。2019年、図3のように水素を常に供給し発熱反応を連続的に起こす手法を考案し、単位面積あたり10倍以上の発熱を観測した。ただしこの新規手法の特許は取得したが、未だ系統的なデータを得ることができていない。

図



図


課題解決の研究手法

 ナノ構造金属表面の組成・構造によってQHEによる発熱量が大きく変わることがこれまで明らかになっている。そこで、図3の連続透過発熱方式において、イオンビームスパッタによりナノ金属層の組成や構造を変化させたサンプルを作成して発熱実験を行い、系統的データを取得することで、さらに大きな発熱量・発熱密度の達成を狙う。

期待される研究成果

 本研究により、QHE反応の発熱量の増大が期待できる。本手法は、太陽光や風力と水から生成される微量の水素を用い、CO2排出なしにエネルギー発生が可能であり、実用化できれば、地球温暖化対策への貢献度は大きい。