地球環境研究助成

地球環境研究助成05-02

調光スマートウインドウに向けた酸化物半導体表面プラズモンの機能制御

代表研究者
東京大学 大学院工学系研究科 准教授
松井 裕章

研究の背景・目的

 近年の窓応用において、可視透明な近赤外クロミック技術が新しい遮熱機能として産業界から要請され、夏場や冬場の熱マネージメントの効率化に必要とされている。本研究では、酸化物半導体ナノ粒子の近赤外表面プラズモン励起の電子キャリア制御に着目する。ナノ粒子と電解質界面で形成される静電的な電荷蓄積に伴う電子ドーピングを酸化物半導体の近赤外表面プラズモンの電子キャリア制御に発展させる。特に、表面プラズモンの光学的性質は、ナノ粒子内の電荷蓄積及び電子状態に強く依存する。これらの研究課題を解決し、可視・近赤外域の光学的特性を選択的に制御可能なプラズモンクロミック機能を持つ透明遮熱技術の構築を目指す。

研究内容・課題

 本課題の研究内容は、以下の3つ研究項目から構成される。①不純物添加による化学ドーピング法を用いたナノ粒子の表面プラズモン励起の解明。②電気化学的手法を用いたナノ粒子と電解質間の固液界面における静電場誘起(電子ドーピング)による表面プラズモン励起の電場変調、及び③調光スマートウインドウの熱的制御(近赤外光の日射熱)を実施する。従来の手法として、遷移金属酸化物(WO3, MoO3)の電子状態変化を利用した可視光制御が報告されている。この方法は、可視から近赤外へ向けて光学制御され、可視透明性を満たせない。故に、可視透明な近赤外クロミック機能は従来技術の延長では解決できない課題となる。

課題解決の研究手法

 酸化物半導体は、電場誘起に伴う電子キャリアの生成が可能である。この方法は、ナノ粒子と電解質の固液界面で生じる電荷蓄積効果により、ナノ粒子母体の電子状態が絶縁体から金属相へのスイッチ制御が期待される。例えば、正電荷イオンがナノ粒子表面に吸着し、電子キャリアが母物質内に誘起され、ナノ粒子内の電荷(電子)分布が変化する。それは、ナノ粒子間界面の表面プラズモン制御(共鳴波長や励起強度)に繋がる。本課題では、ナノ粒子と電解質間界面の静電容量的な電荷蓄積を用いて、表面プラズモンの透明エレクトロクロミック制御を実現する。

期待される研究成果

 近年、近赤外光(日射熱)の遮熱制御に関する研究開発は、熱制御の観点から注視され、特に、自動車・住宅等のウインドウ応用(熱を逃がす・止める)に向けて、「可視透明」と「反射遮熱」が社会的に要求さる。更に、外気温に応じて遮熱性能が電気的に制御可能なクロミック機能も、室内環境の空調制御に対して重要な役割を果たす。本研究で実施する調光スマートウインドウの開発は、遮熱性能の高いガラス窓を住宅・建築物への普及に寄与し、それは省エネ社会を通じて地球温暖化防止に貢献する。更に、ZEHやZEBに代表されるように、二酸化炭素排出量を抑制した高効率なエネルギー利用が可能なスマート住宅に寄与する。