地球環境研究助成

地球環境研究助成05-03

住宅群における太陽熱・木質バイオマス熱利用システムの最適運用手法の開発

代表研究者
工学院大学 建築学部まちづくり学科 教授
中島 裕輔

研究の背景・目的

 脱炭素社会に向けて、木質バイオマス熱やエネルギー利用効率の高い太陽熱は、地産地消型の再生可能エネルギーとして普及が望まれる技術である。本研究では、徳島県神山町にある太陽熱利用システムと木質バイオマス熱供給システムの双方が導入されている分棟型集合住宅に、申請者が開発している「環境見える化システム」を組み込み、最適運用手法を開発することを目的としている。

研究内容・課題

 太陽熱及びバイオマス熱の2種類の再エネを活用する暖房・給湯システムが導入された住宅群において、システムの最適運用に向けて環境・エネルギーを見える化する仕組みを各住戸に組み込み、住戸どうしの運用情報の共有と、住戸・プラント間での需給連携を行うエネルギーマネジメント手法を開発し、脱炭素と地域の森林整備に貢献する「地産地消型再エネ利用住宅群のモデル」構築を目指す。
 調査対象住戸に導入されている空気集熱型の太陽熱利用は、一般に太陽光発電よりも変換効率は高いにも関わらず、熱ロスの懸念や評価が見えにくいことなどから普及が進んでいない。木質バイオマス熱利用も、発電利用に比べるとエネルギー効率ははるかに高いにも関わらず、住宅群における普及は進んでいない。これらの普及に向けて、熱利用の高い効率を活かせるような使い方・最適運用手法の確立と、年間を通した分かりやすい評価結果の提示が課題と言える。

課題解決の研究手法

 空気集熱型の太陽熱利用では、夏期・冬期の使い方による有効性の検証と、最適な使い方を行うためのツールが必要と考え、申請者が開発している「環境見える化システム」を活用する。計測データから有効性を検証するとともに、最適な使い方を居住者に知らせ、居住者も効果を数値で確認できるため、効果的な利用が促進される。バイオマス熱についてもこの見える化システムを活用し、使い方による暖房効果の有効性の検証と、情報発信による需要の平準化といったエリア全体でマネジメントを行うシステムを構築することで、最適運用手法を確立する。

期待される研究成果

 バイオマス熱を利用した温水暖房システムは、太陽熱利用システムの循環ファンを活用することで室内を効率よく暖めることができ、日中は太陽熱、夜間はバイオマス熱というように使い分けることもできるため、両者は組み合わせることで相乗効果が生まれるシステムと言える。これらに見える化システムを組み合わせて居住者のシステムへの理解とエリア内のエネルギーマネジメントを行うことで、太陽熱・木質バイオマス熱利用システムの最適運用の実現が期待できる。またこれらは、実質的な省エネルギー・CO2削減効果だけでなく、中山間地域の住宅群における地産地消型の再エネ導入モデルとして普及が進むきっかけとなることが期待される。