地球環境研究助成

地球環境研究助成06-04

大規模IoT観測網と先端計算機資源を統合した森林管理システムの構築

代表研究者
東京大学 大学院農学生命科学研究科・助教
中島 徹

研究の背景・目的

 京都議定書以降、わが国の二酸化炭素に対する森林吸収源としての機能評価は、国際社会の合意形成においても科学的な透明性を強く求められるようになってきている。本研究は、これまで申請者の取り組んできたリモートセンシングによる観測システムや、自然領域における樹木の成長予測、森林管理への応用を組み合わせ、多様な林分の集合体として、森林管理に応じた二酸化炭素吸収量等の公益的機能を正当に評価し、地域の意思決定に活用し得るコンピューター・ツールを開発することを目的とする。

研究内容・課題

 具体的には、既に遠隔センサー等を設置している東京大学附属拠点で蓄積された自然領域のビッグデータを収集し、スーパーコンピュータ等の大規模計算機資源で分析する。この時、申請者の開発してきた伐採などの人為的な自然への介入によって異なる、樹木の成長予測技術等のコア技術と統合することによって、時間・空間両面の持続可能性についても可視化する。自然資源の変化は長期にわたるため、予測精度の検証と改善も課題として取り組む。
 同時に、将来の持続可能性を担保するために現場の森林管理者とも連携し、具体的な伐採等の意思決定という実務的な課題においても、開発したコンピュータ・ツールの有効性を検証する。

課題解決の研究手法

 樹木をはじめとする自然資源の将来予測においては、長期観測されたビッグデータ等の実測値と推定値を比較することで、検証する。精度の芳しくない場合は、原因を検討し、機械学習によるパラメータの推定方法の見直し等により改善を行う。また、森林管理者へのヒアリングを実施し、意思決定に必要な情報の表示方法等についても効果検証を行う。

期待される研究成果

 人為的な自然への介入により、樹木で構成される森林資源の変化を、林分から流域等の多様なスケールで視覚化する。このことによって、国土の7割を占める森林によって保全される環境や、炭素吸収源としての温暖化防止への効果検証に基づく森林管理者の意思決定支援を通し、地域の気候帯等の特徴に応じた人間と自然との双方向的な関係性の構築に貢献し得ると期待される。