地球環境研究助成

地球環境研究助成07-01

多元素合金ナノ粒子触媒の開拓と分子認識CO2活性化

代表研究者
大阪大学 大学院工学研究科・准教授
森 浩亮

研究の背景・目的

 5成分以上の多成分系のハイエントロピー合金(HEA)は、ハイエントロピー効果、カクテル効果などの核心的効果により従来の合金とは異なる特性を示す。しかしながら、国内外において、ハイエントロピー合金のナノ粒子化はもちろんのこと、触媒材料として利用は未開拓分野である。そこで本研究では、HEAナノ粒子触媒をモチーフとした次世代触媒開発の、斬新で画期的な方法論の提供を目的とし、新奇ナノ粒子触媒の創成と、高難度なCO2資源化反応における特異機能発現を世界に先駆け行う。

研究内容・課題

 独自に開発したナノ粒子合成ストラテジーに、機械学習的予測を融合することで、HEAの核心的効果を発現する触媒を創成する。それにより、反応分子を選択的に認識・活性化できる金属表面を創成し、触媒活性・選択性の飛躍的向上を狙う。さらに、触媒条件下でのナノ粒子表面のその場観察と、シミュレーションによる可視化で、表面微細構造のダイナミクスと触媒機能の相関を明確にする。本研究の達成によって、既存の金属触媒材料とは一線を画す新たな触媒物質カテゴリーを創出し、その学術的体系化を目指す。

課題解決の研究手法

 これまでTiO2担体のスピルオーバーした活性水素種を還元駆動力とする均一なHEAナノ粒子の合成法を世界に先駆け独自に開発した。本手法を軸に様々なファクターを系統的に検討し、その汎用性を確かめる。HEAの形成条件として知られる混合エントロピーや、構成元素の原子半径比を表すデルタパラメーター、およびこれまでの知見に基づいて合金の候補を抽出して条件の最適化を系統的に行い、均一なHEA合金ナノ粒子合成手法を確立する。

期待される研究成果

 本研究の達成によりHEAナノ粒子触媒領域でイニシアチブを握ることが可能となる。また実用段階に達すれば、既存触媒プロセスの高効率化、省エネ化、低コスト化はもとより、元素戦略的にも希少金属触媒の使用量を低減できるキーテクノロジーに成り得る。さらにターゲットとするCO2資源化反応では、製鉄所やごみ焼却所から排出されたCO2と、太陽光や水力などの再生可能エネルギーにより生産された水素を反応させる。経済産業省の発表では、合成メタンの国内年間供給量を2030年までに3.6億m3、2050年までに326億m3想定しており、全需要量の10%に対して本技術を適用した場合、2050年におけるCO2削減量(使用量)は、少なくとも30億m3/年のポテンシャルを有する。