地球環境研究助成

地球環境研究助成07-04

水素社会の実現に向けた高性能光学式水素センサーの開発

代表研究者
京都大学 エネルギー理工学研究所・准教授
中嶋 隆

研究の背景・目的

 地球温暖化の原因は、化石燃料の大量消費に伴う大量のCO2放出であると言われており、地球温暖化対策は喫緊の問題である。この問題を解決するための方策として、CO2を排出しない水素エネルギーが注目を集めているが、爆発の可能性がある水素エネルギーの普及には高性能水素センサーによる水素ガスの漏洩監視が不可欠である。既に様々なタイプの水素センサーが実用化されており、多点を同時に遠隔監視できる水素センサーとしては、FBGファイバーに基づく光学式水素センサーが適している。しかし、検出感度と検出時間が不十分である。
 本研究の目的は、レーザーを用いてFBGファイバー上に水素検知物質を高密度にその場創製することにより、検出感度と検出時間が飛躍的に高められた高性能な光学式水素センサーを開発することである。

研究内容・課題

 光学式水素センサーの検出感度は水素検知物質の数密度に依存し、また、検出時間は水素検知物質の膜厚に依存するので、水素検知物質が高密度に分布する極薄膜をFBGファイバー上に作成すればよい。
 その場合の課題としては、たとえば水素検知物質の有力な候補である、プラチナ(Pt)またはパラジウム(Pd)を酸化タングステン(WO3)の表面に担持した複合材料を水熱法で作成すると、粒子が粗大化してしまって高い検出感度と速い検出時間を実現できない、ということが挙げられる。

課題解決の研究手法

 上記の課題を解決するため、Ptナノ粒子担持WO3薄膜をレーザー照射によってガラス基板およびFBGファイバー上にその場創成することを試みる。

期待される研究成果

 水素はCO2や放射性物質を排出しない、したがって地球環境保全や温暖化防止に適したクリーンなエネルギーであるものの、爆発する危険性があるため、水素の生成/輸送過程における漏洩を多点で同時に遠隔監視できる高性能水素センサーの開発が急務である。本研究ではこれに応えるべく、我々の光科学および材料科学における知識と経験をもとに、レーザーを駆使してFBGファイバーに基づく高性能光学式水素センサーを開発する。