地球環境研究助成

地球環境研究助成08-02

データセンターの大幅な省エネを実現する自己組織化冷却

代表研究者
九州大学 大学院 工学研究院・教授
森 昌司

研究の背景・目的

 近年、AI・DXの急速な進展に伴い、データセンターやパワー半導体などの高性能電子機器は著しい高発熱化が進んでいる。一方で、これらを支える冷却技術は依然として空調や外部動力に大きく依存しており、消費電力の増大とCO2排出の主要因となっている。特にデータセンターでは、総消費電力の約3割が冷却に費やされているとされ、冷却の高効率化は地球環境保全の観点からも喫緊の課題である。
 本研究は、水を作動流体とし外部動力を必要としない「パッシブ冷却」に着目し、自己組織化現象を利用したハニカム多孔体を用いることで、従来技術の限界を大きく超える超高熱流束冷却の実現を目的とする。

研究内容・課題

 本研究では、電解析出時に生じる自己組織化現象を活用し、微細構造が自発的に形成される金属製ハニカム多孔体を開発する。この多孔体は、毛管力による強力な液供給機能と、発生蒸気の迅速な排出機能を併せ持つ点に特徴がある。
 これまでに、ハニカム多孔体を用いることで限界熱流束(CHF)が大幅に向上することは実証されてきたが、その詳細な促進メカニズムや最適構造条件は未解明である。本研究の課題は、気泡群挙動や乾き出し限界を支配する因子を明らかにし、再現性のある構造設計指針を確立する点にある。

課題解決の研究手法

 まず、電解析出条件(電流密度、溶液条件など)を系統的に制御し、細孔径分布や層構造を精密に調整したハニカム多孔体を作製する。次に、高速赤外計測やX線CTを用いて、沸騰時の温度場および気液界面挙動を可視化・定量化する。
 得られた実験データを基に、沸騰の非定常性を考慮した限界熱流束モデルを構築し、液供給と蒸気排出を最適化する幾何構造を理論的に導出する。これらを統合することで、超高熱流束除熱を安定して実現する冷却構造の確立を目指す。

期待される研究成果

 本研究により、従来比で桁違いに高い熱流束を無動力で処理可能な革新的冷却技術が確立される。これにより、データセンターやパワーエレクトロニクス分野における冷却電力の大幅削減が可能となり、CO2排出削減に直接的に貢献する。また、自己組織化多孔体による沸騰冷却の学理的理解が深化することで、高発熱機器冷却に関する新たな設計指針を提示できる。加えて水を用いた安全・低環境負荷な冷却技術として、持続可能な情報社会および脱炭素社会の実現に資する基盤技術となることが期待される。

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