地球環境研究助成

地球環境研究助成08-03

深層学習を活用した再生可能エネルギーポテンシャル評価と国際連携

代表研究者
筑波大学 システム情報系・准教授
大楽 浩司

研究の背景・目的

 パリ協定以降、再生可能エネルギーは脱炭素社会の中心的役割を担っているが、気候変動はその安定供給に新たな不確実性をもたらしている。特に太陽光や風力は天候に左右されやすく、将来の供給安定性を科学的に評価することが不可欠である。本研究は、最新の国際気候モデル群を活用し、統計的補正と深層学習を組み合わせた先進的手法により、高解像度の気候情報を生成することを目的とする。これにより、日本を含むアジア・アフリカで再エネ発電の可能性と極端気象リスクを詳細に評価し、国際的な知見共有を進める。成果は、再エネ導入戦略や気候変動への適応策の科学的基盤を強化し、持続可能なエネルギー政策の実現に貢献するものである。

研究内容・課題

 本研究は、気候モデルと観測データを組み合わせ、物理的な整合性を考慮した深層学習と統計的補正を併用する新しいダウンスケーリング手法を開発するものである。これにより、極端気象を含む高解像度の気候情報を提供し、再生可能エネルギーの発電可能性や複合的なリスクを定量的に評価する。主な課題は、観測データの偏在による不確実性、衛星と地上観測の整合性確保、モデルの偏り低減、極端現象の再現性向上、長期予測の信頼性確保などである。さらに、複数モデルを用いた予測のばらつきを抑え、計算効率を高めることも重要な課題である。

課題解決の研究手法

 観測データの不足は、多様な情報の統合と品質管理によって補い、傾向を保持するバイアス補正と物理的整合性を組み込んだ深層学習を組み合わせることで、解像度と信頼性を高める。極端現象に重点を置いた学習や信頼度の調整により、予測のばらつきを抑える。さらに、国際的なベンチマークや標準化を進め、計算効率と再現性を確保する処理体制を整備する。WCRP CORDEXや国際タスクフォースとの協力により、世界で比較可能な成果を実現する。

期待される研究成果

 本研究は、日本・アジア・アフリカを対象に、将来の気候条件下で再生可能エネルギーの発電可能性と極端気象リスクを評価する高解像度のデータセットを構築する。これにより、GX戦略やエネルギー基本計画、気候変動適応計画に科学的な裏付けを提供し、電力系統の強化や適地選定の高度化に貢献する。また、送配電事業者や自治体、企業に対して、耐風・耐熱設計、蓄電や需要調整などレジリエンス向上のための判断材料を提示し、極端事象へのリスク管理を支援する。さらに、国際的な連携を通じて緩和と適応の両面での便益を定量化し、世界規模での気候適応戦略と再エネ政策の高度化に寄与する。科学的知見を政策や産業に橋渡しし、脱炭素社会の実現に貢献することを目指している。