地球環境研究助成

地球環境研究助成01-01

CO2排出の大幅な削減に向けたコンクリートがれきからのコンクリート製造

代表研究者
東京大学 生産技術研究所
講師 酒井 雄也

研究の背景・目的

 コンクリートの材料であるセメントの主原料は石灰石であるが、その製造工程では燃焼と脱炭酸を含み、全産業の5%に相当するCO2が排出される。本研究ではCO2排出の削減を飛躍的に進めるため、セメントを使用せずに、コンクリートがれきからコンクリートを作製する手法を確立することを目的とする。

研究内容・課題

 本研究ではコンクリートがれきを粉砕し、得られる粉末を圧縮成形することでコンクリート製品を作製するが、成形体の作製に関して以下のような課題がある。
課題(1):コンクリートがれきの粉砕や成形の合理的な方法が確立されていない
課題(2):載荷条件によっては引張や曲げの性能、耐摩耗性に劣る恐れがある
課題(3):成形体の耐久性に関する知見がない
課題(4):圧縮成形により製造するコンクリートには鉄筋が導入されていない

課題解決の研究手法

課題(1):粉砕ではボールミルを用いて、ボールの粒度や粉砕助剤をパラメータとして、また成形では成形圧力や時間、含水率をパラメータとして最適な条件を検討。
課題(2)(3):どのような条件の時に力学性能が不足するのかを把握し、その上で対策を検討。屋外暴露や耐摩耗試験、凍結融解試験を行うことで耐久性を評価。
課題(4):鉄筋を入れた状態での成形法を確立することで鉄筋コンクリートを作製。

期待される研究成果

 本研究の達成により、コンクリートがれきを原料とした、実用的なコンクリート製品の製造が可能となる。鉄筋の設置が実現し、スケールアップの容易なボールミルによる粉砕も確立されれば、大型のコンクリート製品の製造も可能になると期待できる。上記成果は、セメント製造に伴い発生する大量のCO2排出の抑制に貢献するものである。また、コンクリート製造のための原料採取も不要となるため、採取に伴う森林伐採や河床掘削も抑制される。将来的には解体現場でのコンクリート製造を考えており、それが可能となれば輸送に伴うCO2排出も削減される。このように、本研究で開発する技術は、コンクリートに関わる環境負荷を多角的に削減するものである。

図