地球環境研究助成

地球環境研究助成01-01

CO2排出の大幅な削減に向けたコンクリートがれきからのコンクリート製造

代表研究者
国立大学法人東京大学
生産技術研究所・准教授 酒井 雄也

研究目的

 本研究ではコンクリート製造において発生する大量のCO2排出を削減することを目的として、CO2排出の主原因であるセメントを使用せずに、コンクリートがれきからコンクリートを作製する実用的な手法を確立する。コンクリートがれきを原料とすることで、コンクリート製造に必要な石灰石や砂、砂利の採掘にかかわる森林伐採や河床や海底の掘削を回避することにもつながる。

研究方法

 コンクリートがれきの粉砕および圧縮成形を様々な条件で実施することで、最適な粉砕および圧縮成形条件を把握した。また成形後の製品に対して様々な処理を行うことで、最適な処理条件を把握した。さらに、成形時に鉄筋や繊維を用いることで、成形体の補強を試みた。これらの成形体に対して、圧縮や曲げ強度および凍結融解抵抗性や屋外暴露した際の耐候性などを把握することで評価を実施した。また本手法により発生するCO2排出量を計算し、一般的なコンクリートと比較した。

研究成果

 まず、コンクリートがれきの粉砕及び成形を効率的に行う条件を検討した。その結果、ボールミルを用いてコンクリートがれきを粉砕する場合の、コンクリート片とボール径の寸法や、ミルポットに投入する容量、回転数などの影響が、また圧縮成形において、コンクリートがれきの粒径や含水率、圧縮成形時の圧力や成形時間の影響について整理された。続いて、圧縮成形により作製した成形体に対して後処理を施すことで、強度を改善する方法を検討した。処理手法としては水中浸せき後に加熱する方法と、オートクレーブ処理について検討したが、いずれも一般的なコンクリート以上の強度が得られた。さらに、成形体の曲げ強度、引張強度および各種耐久性にかかわる分析を実施した結果、PP繊維をコンクリートがれき粉に混合することで、曲げ、引張のいずれも一般的なコンクリートを上回る強度が得られた。吸水率やスケーリング抵抗性、耐候性について、一般的なコンクリートと同等か、上回る性能を有することを確認した。また試算の結果、本研究で開発した手法により成形体を製造することで、一般的なコンクリートと比較して、CO2排出を少なくとも1/3〜1/10に抑制可能であることを確認した。

まとめ

 本研究で開発したプロセスにより、CO2排出を抑制しつつ、一般的なコンクリートと同程度かそれ以上の性能を有する成形体を、コンクリートがれきの粉砕、圧縮成形により製造可能であった。

地球環境保全・温暖化防止への貢献・寄与

 本研究で開発した手法により成形体を製造することで、一般的なコンクリートと比較して、少なくともCO2排出を1/3〜1/10に抑制可能であることを確認した。コンクリートがれきを原料とすることから、一般的なコンクリートの原料採取における森林伐採や、河床・海底の掘削などを回避可能である。

主な成果発表

 国際ジャーナルに3本の論文を投稿中である。