地球環境研究助成

地球環境研究助成03-01

日本全国の森林バイオマスサプライチェーン調査と利用可能量推計

代表研究者
宇都宮大学 農学部・准教授
有賀 一広

研究の背景・目的

 2012年7月にFITが開始され、木質バイオマス発電、特に買取価格が高値に設定された未利用木材を燃料とする発電施設が2020年6月末時点で全国148ヵ所新規認定されている。既に74ヵ所で稼動しているが、未利用木材を買取期間20年間安定して調達できるか、さらにはFIT終了後の木質バイオマス発電の採算性が懸念されている。本研究では実際の森林バイオマスサプライチェーンを調査し、その調査結果を基に、より現実的な利用可能量推計モデルを構築し、この推計モデルを用いて森林バイオマス長期安定供給シナリオを提示することを目的とする。

研究内容・課題

 現在燃料材としては小径材、曲がり材、枝条など用材と比べて作業効率が低下する未利用木材が利用されている。また多数の発電施設が稼動し、燃料材価格が高騰している地域では上記の燃料材に加えて、これまであまり活用されてこなかったアカマツや広葉樹、新たな樹種の利用が検討されている。さらに林業経営の採算性、環境的側面から、針葉樹人工林を針広混交林や広葉樹林へ誘導する試みや、主伐後の人工林を主伐・造林一貫作業や天然更新により低コストで再造林する技術が検討されていることから、新たな燃料材の生産から森林の更新まで含めた森林バイオマスのサプライチェーンの調査を行い、最新の技術に基づいて利用可能量を推計する必要がある。

課題解決の研究手法

 本研究では各地域の研究者と協力して、大中小規模の利用間伐、皆伐再造林作業のデータを収集することにより最新の造林・収穫費用算出式を構築する。この結果に基づいて利用可能量推計モデルを構築し、この推計モデルを用いて今後の木質バイオマス発電の採算性向上に資する森林バイオマス長期安定供給シナリオを提示する。

期待される研究成果

 森林バイオマスをエネルギーとして利用することは地球温暖化対策、再生可能エネルギー供給力の向上や中山間地域の地域振興に貢献することが期待され、この推計モデルを用いることにより、安定的な森林バイオマス供給体制の構築へと発展することが期待される。