地球環境研究助成

地球環境研究助成03-04

地球環境にやさしい省エネルギー型食物増産用LEDの開発

代表研究者
近畿大学 理工学部・准教授
今井 喜胤

研究の背景・目的

 光には右回転と左回転、二種類の回転する光・円偏光発光(CPL)が存在する。現在、CPLの取り出しは、偏光板を用いるため、非常に非効率である。そこで、CPLを発するLED(以下、CP-OLED)を用いれば、従来の手法に比較して、理論上、そのエネルギー効率を2倍にすることが可能である。
 一方、このCPLは、植物成長を促進すると言われており、食の安全と安定供給を目指した水耕栽培に応用できれば、より高い生産性が期待できる。

研究内容・課題

 地球環境にやさしく、回転する光・CPLを高効率で発する円偏光発光(CPL)色素、外部磁場でCPLを高効率で発する磁気円偏光発光(MCPL)色素を開発する。これら色素をデバイスに用いることにより、CP-OLEDの作製を行う。さらに、CPLを用いた食物増産への展開を目指し、新しい食物増産システムの構築を試みる。

課題解決の研究手法

 芳香族を基本骨格に光学活性置換基、拡張π電子系置換基を導入することにより、光学活性拡張π電子系有機発光体・磁気応答拡張π電子系有機発光体を合成する。高分子マトリックス中にこれら発光体をドープし、円偏光閉込/増幅効果によるCPL増幅フィルムを作製する。その際、最適なキラル空間配置を誘起し、大きなCPL物性(光の回転)を狙う。CPL増幅フィルムを積層させることにより、CP-OLEDを開発し、植物成長評価を試みる。

期待される研究成果

 本研究を通して、現在、手探りなCPL創製に対して、高効率かつ新奇なCPL発光体の設計指針・CP-OLEDのデバイス設計指針を提示したい。植物工場における、最大の問題点は、コストである。本研究で得られた CP-OLEDを用いて植物栽培を試みれば、より高い生産性が期待される。すなわち、「省エネ光」と「食物増産」の相乗効果により、地球温暖化防止に貢献できる。
 本研究は、立体視が可能な3Dディスプレイや、光通信やバイオセンサー、高度セキュリティー印刷などへの応用という技術革新を実現するだけでなく、キラル物質の励起状態での分子情報の解明や、励起状態の基礎科学学理の深化にも貢献できる。