復興支援特定研究助成

復興支援特定研究-01

研 究 題 目
津波堆積物を用いた耐侵食性覆土材の生成と汚染土壌の安全保管
所属機関・役職
東北大学大学院環境科学研究科 教授
代 表 研 究 者
高橋 弘

【研究目的】

 東日本大震災で発生した津波堆積物の量は膨大であり、できる限り再資源化することが望まれている。一方、福島県では除染作業の1つとして放射性物質が降り積もった土壌の地表面を剥ぎ取る掘削作業が行われているが、掘削土壌の処分先は未だ決まっておらず、しばらくの間、仮置きせざるを得ない状況にある。覆土は空間線量を下げる効果的な方法であるが、単に汚染土壌を通常土で覆うだけでは耐久性の観点から不十分である。そこで、津波堆積物を用いて耐久性・耐侵食性の高い地盤材料を生成することを目的とする。

【研究方法】

 本研究を遂行するための基礎技術となるのが「繊維質固化処理土工法」である。本工法の最大の特徴は、津波堆積物(ヘドロ)の再資源化の過程で古紙破砕物を攪拌・混合することである。土粒子と繊維質物質が絡み合うことにより、耐久性ばかりでなく耐侵食性も付加されると予想されるが、十分な耐侵食性を付加するための古紙破砕物およびセメント系固化材の添加量は不明である。そこで、本研究では短時間で耐侵食性を定量評価できる水中噴流掘削装置を作製し、また古紙破砕物およびセメント系固化材の添加量を種々に変化させた試料を作成して掘削実験を実施する。

【研究成果】

(1) 水中噴流装置を用いた耐侵食性評価:
 噴流による侵食量εは、ε=kd(τ-τc) で表される。kdは侵食係数であり、この値が小さいほど侵食量は小さい、すなわち、耐侵食性が高い。τは噴流のせん断応力である。またτcは限界せん断応力であり、この値が大きいほど侵食量は小さい、すなわち、耐侵食性が高い。水中噴流装置を用いた実験の結果、繊維質物質の添加量の増加およびセメント系固化材の添加量の増加とともに侵食量εが小さくなり、耐侵食性が増大することが確認された。
(2) 人工降雨装置による耐侵食性評価:
 人工降雨装置内に本研究で開発した地盤材料をセットして、雨量強度と侵食土砂量との関係について検討した。斜面勾配は、一般的な盛土の勾配である1:1.5とした。雨量強度は、70、90、120mm/hに設定した。実験の結果、繊維質固化処理土は降雨に対する侵食抵抗性が高く、ベントナイト混合土と比べて雨量強度の影響を受けにくいことが確認された。
(3) 自然降雨による耐侵食性評価:
 4m角、高さ1mの試験盛土を作成し、2012年10月〜12月の3ヶ月間、自然降雨に晒して土砂流出量を計測した。その結果、繊維質固化処理土の流出量はベントナイト混合土の流出量の約1/10であり、一般の覆土材よりも高い耐侵食性を有することが確認された。

【まとめ】

 水中噴流装置、人工降雨機および自然降雨による耐侵食性試験を実施した結果、本研究で作成した覆土材は一般に用いられているベントナイト混合土に比べて極めて高い耐侵食性を有することが確認された。