復興支援特定研究-01
研 究 題 目 |
高精度血液スクリーニングによるガン診断技術の開発 |
所属機関・役職 |
東京大学大学院理学系研究科・教授 |
代 表 研 究 者 |
合田 圭介 |
【研究目的】 |
福島原発事故の放射性物質漏洩によって原発近隣の住民のガン疾患のリスクが増大しているが、従来のMRI、CT、PETなどによるがん検査は、医療被曝などの副作用に加え、高額な医療費と長い検査時間が問題となる。この問題を解決するため、ガン転移の原因とされる血液中に希少な循環腫瘍細胞(CTC)を高速検出する測定技術を開発することで、採血により非侵襲的に短時間かつ低コストでガン検査を行い、福島県とその近隣の県の住民(特に子供や妊婦)のガン診断における経済的負担の軽減することが目的である。 |
【研究方法】 |
本研究では、申請者が近年発明したSTEAMと呼ばれる超高速光イメージング技術を元に実証されたSTEAMフローサイトメトリーを用いる。2012年に行った原理検証では長波長のレーザーを光源として用いたため、画像の分解能がガン細胞の認識精度が低かったが、本研究では、短波長の800 nmのTi:Sapphireレーザーを光源として用いることで、画像クオリティの向上を目標とする。これにより、高速流体中の細胞をリアルタイムでハイスループットかつ高精度に分析・分類ができ、血液診断に応用することで、血液中に希少なCTCを検出する医療診断技術の開発を行う。 |
【研究成果】 |
東京大学の研究室において、Ti:Sapphireレーザーを基盤としたSTEAMフローサイトメトリーに必要な光学系のセットアップの構築、及びマイクロ流体チップの作製を行った。そして、これらを組み合わせたフローサイトメーターにおいて、0.5 m/sという高速の流速で大きさ15μm程度であるマウスのミエローマ細胞を高速・高分解撮影することに成功した。また、イメージングの利点を活かし、取得した細胞の写真から細胞の大きさの統計を得ることができた。 今後は、STEAMフローサイトメーターにFPGAを組み込み、リアルタイムな画像診断を可能にする。また、乳ガン細胞などを用いて、ガン細胞を検出するプロトコルを開発する。この際、イメージングと同時に、抗体で蛍光標識をつけることで蛍光検出も行い、複数のパラメータをもって高い選択性でガン細胞を検出できるようにする。この結果を元に、病院と連携して血液サンプルを用い、血液の画像診断でCTCの検出を行う。そして最終的に東北大学病院と協力し、福島近隣住民のガン検査を行っていく。 |
【まとめ】 |
STEAMフローサイトメーターによって、高速流体中の細胞の画像を取得し、細胞の大きさを測定することができた。このことから、ガン細胞を大きさ等のパラメータで選別することが可能であると考えられる。 |