復興支援特定研究助成

復興支援特定研究-04

研 究 題 目
福島汚染土壌の新奇減容化技術の開発
所属機関・役職
大阪大学 大学院工学研究科 教授
代 表 研 究 者
西嶋 茂宏

【研究目的】

福島県内での土壌剥ぎ取り作業によって排出される大量の汚染土壌の減容化が喫緊の課題であり,低線量土壌の再利用などの最終処理を含めた検討が求められている。現在開発されている分級や洗浄の手法では,低線量土壌の線量レベルが土壌の初期線量や土質に大きく依存するという問題があり,減容化技術としての実用化への障壁となっている。本研究では,砂礫表面の物理的な研磨剥離技術と,環境低負荷のカリウム肥料溶液を用いCsの移行技術を組み合わせることで,湿式分級により低線量の砂礫を埋戻しや再利用できるレベルまで線量低減し,Csを吸着した少量の高線量粘土を分離し,汚染物の減容化により復興に資することを目的とする。

【研究方法】

本研究では,従来の分級や洗浄の手法に比較して,より有効な土壌の線量低減の手法を検討した。まず,ボールミル処理による砂礫の物理的な表面研磨による線量低減を試みた。次に,研磨処理の際に線量環境低負荷のカリウム肥料溶液を媒体して用いることにより,粘土分へのCsの化学的移行について検討した。また有機成分を多く含む土壌の効率的な分級のため,食品添加物の一つである炭酸カリウムを用いて有機物の分解による分散を試みた。これらの結果に基づき、一連の除染土壌減容化システムについて,実用に向けての検討を行った。

【研究成果】

まず,福島県内にて採取した宅地土壌について,ふるいによる湿式分級のみを行った場合と,本研究で提案するボールミル研磨とCs移行処理を同時に行った場合の線量低減効果を比較した。粘土・シルト分と砂礫分に分級し,比放射能と重量比を測定したところ,処理前は約5700 Bq/kg(目安値)であった宅地土壌について,湿式分級のみを行った場合の砂礫分は3300 Bq/kgまで低下,Csのボールミル研磨・移行処理を行った場合は,1500 Bq/kgまで低下した。このことから,本手法により道路資材等に再利用可能なレベルまで比放射能を低減させることが可能であることが分かった。しかし,農地土壌などの比較的有機物に富む土壌については,上記の手法を用いても十分な線量低減が行えないことが明らかになった。この原因として,有機物によって土壌粒子が凝集することで,粘土・シルト分が十分に分離されないことが挙げられる。
そこで,食品添加物であり環境低負荷の炭酸カリウムを用いて土壌有機物を分解することで凝集の解消を試みた。その結果,炭酸カリウム処理によって有機成分が分解し,土壌の分散性が向上し,より高精度の分離ができることが確認された。

【まとめ】

除染土壌の減容化を目的として,一般的な湿式分級よりもさらに砂礫の比放射能を低減するための土壌研磨処理とCs移行処理を検討した。その結果,砂礫の比放射能を再利用可能なレベルまで低減させることが確認でき,減容化の可能性が示された。さらに,有機物に富む土壌に関しては有機物の分解により凝集が解消できることが示された。今後はこれらの結果をもとに,一連の減容化システムとしての実用化に向けた検討を行う予定である。