植物研究助成

植物研究助成 33-06

樹木根の肥大成長特性の解明に向けた光ファイバセンサを用いた計測技術の開発

代表研究者 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究員 藤田 早紀

背景

 近年、気候変動の影響による雨や風に起因する自然災害が頻発しており、生態系を活用した防災・減災への期待が高まっている。そのため、風や雨に対して耐性が高く、自然災害に強い森づくりが今後より一層重要となる。外力による樹木の破壊のうち、「根返り」に対する強度を左右するのは、地中に張り巡らされている樹木の「根系」である。主に太い根が樹木を力学的に支えており、風など外力の影響を受けることで、その太り方に偏りが生じることが報告されている。そのため樹木は、風などの外力に対する根返りの強度が高まるように根の肥大成長特性を最適化していると考えられる。しかし、従来の根系調査方法には、「破壊を伴うことが多い」、「多大なる労力と時間が必要」、「計測可能な肥大成長特性は総肥大成長量のみ」などの欠点がある。

目的

 本研究の目的は、根の円周方向に沿った成長量分布を計測する技術を確立し、非破壊的に樹木根の肥大成長特性を評価することである。本研究では、日本の主要造林樹種を対象とし、それぞれの樹種の根の肥大成長特性を評価する。

方法

 高分解能で、計測線上のひずみ分布を計測することができる「分布型光ファイバセンサ」を根に直接巻き付け、光ファイバセンサに沿った肥大成長を非破壊に計測する。狙いは、根の円周沿いの1)肥大成長量とその分布、2) 成長速度、3)季節性などの肥大成長特性を明らかにすることである。

期待される成果

 樹木根の肥大成長特性を明らかにすることで、根系情報を考慮した森づくり、森林管理の実現、森林の防災・減災機能の高度化の実現が期待される。さらには、肥大成長はその種の特性を反映していると考えられるため、根の肥大成長特性の評価は、根の力学的役割の理解に加え、地上部と地下部の炭素配分やその種の生存戦略の理解に貢献する。